sandtale-fromのブログ

UNDERTALE AUになります。砂漠化の世界、救うのは一輪の金色の花

トリエル ACT

それは、僕を見つめていた。


それはいつものような全てを包み込む瞳ではなかった。


それはいつも寄り添ってくれていたモンスターではなくなっていた。


僕を見るその目を僕は知っている。



失望の目だ。



「ママ、僕…わざとじゃないんだよ」


まだ小さな子供が体を震わせる。声を荒げたそのモンスターに声をかけたのだ。
あぁ…嫌わないで…。どうかトリエルだけは。


「フリスク、その扉から離れなさい」


その声はひどく冷たく感じた。
そういわれても後ろは扉だし、すごい気迫を放つトリエルに近づけない。
間に挟まれて動きが取れない。


「フリスク」


また静かな声が地下に響く。
よく耳を澄ませばかすかに風の音が聞こえてくる。


どこにも動くことができない。


「………フリスクは…ここを出たいの?」


「えっ……?」


先ほどとは少し落ち着いた声、それが多少でも心を落ち着かせる。
そんなこと考えなくたってその答えは出ている。


「どうしてそんなことを聞くの?僕はそんなつもりはないんだ!できることならママと一緒にいたいんだ!」


「なら、今すぐそこを離れなさい」


また冷たく言い放つ声。
さっきと状況が変わっていない。


怖い。トリエルが、じゃない。嫌われてしまうことが、今まで積み重ねてきた日々があっけなく鏡が壊れるほど簡単になくなってしまうことが、怖い。


「………」


一体なにを声に出せばいいだろう。
そもそも僕の声は彼女に届くのだろうか。


トリエルが目を閉じてため息をつく。その音は地下の中、反響してフリスクにもはっきりと聞こえてくる。
そのため息にぞわっと体の芯から冷たくなるようないやな鳥肌が浮き出る。


「そう…そこをどかないというのなら」


トリエルの瞳がゆっくりと開かれる。


「その扉は壊さなくてはいけません。ここを出ていくとあなたの命が危ないのよ」


彼女は何かを覚悟したように足を広げ、両の腕を前に突き出した。
明らかな戦闘態勢だった。


「それでも、あなたがそこをどかないというのであれば、私にその力を示しなさい!!生き残れるだけの力を!!」


「待ってよママ!話を聞いて!」


懇願する声を遮るようにトリエルの手のひらを赤とオレンジ色に光る炎が灯した。
そしてトリエルが地下の空気を斬るかのように腕を薙ぎ払う。


手のひらに灯った炎は真っすぐではないもののフリスクに向かってくる。


「!!」


とっさに左右へ体をしならせ、回避する。
突然のことだったし、まさか本当に攻撃してくるとは思っていなくて頬に炎が掠る。


一体どうすればいいんだろう。
トリエルは自分のことを嫌ってしまったのだろうか。



…………………。




ポケットのお守りを触る。




…………………………。




だめだよ、それに頼っちゃ。
トリエルはどんなことがあっても僕のママだろう?
それはあの日々が証明してくれる。


思い起こされるのはいつも僕を気にかけてくれる少しばかり過保護なトリエルだ


……うん。そうだね。



*決意



自分の声に自分で答えた。
まずは分析しないと。


トリエルはいつもとどう違って見える?
興奮しているようにも見える。汗もかいているようだ。
なにをそこまで焦っている?
聞いてみる必要がありそうだ。


トリエルの炎はまたこちらに向かってくる。


よく見ろ。よく見て、分析しろ。


攻撃するトリエルの顔を。攻撃してくる方向を。


今まで見てきたトリエルとどう違う?


…トリエルは目を合わせようとしない。
どうして合わせようとしないのだろう。


戦うか逃げる以外に道はないのだろうか?


………。


炎が止むのを見計らって話しかけた。


「ママ、僕、ママのこと好きだよ。」


トリエルはほんのわずか、体を震わせた。


「僕は、実を言うとここに来るまで誰にも想われたことがないんだ」


彼女は目をこちらに向けない。
まだ、まだ説得しないと。


「だからママと出会って誰も教えてくれなかったこと、僕の話を聞いてくれる誰かがいてくれること、とても嬉しかったんだ」


「だから」


「ちゃんと僕のことを見て。ちゃんと僕がここにいることをママだけでも知ってほしいんだ」


汗がにじんでいるようにも見える。
正直、僕だって過去を思い起こすのはとてつもなく嫌な事だ。


でもそれを上塗りしてくれたのは間違いなく目の前にいるトリエルただ一人だ。



トリエルはまだ炎を繰り出している。
まだ、目を合わせようとはしてくれないようだ。
炎が体に何度も当たる。熱くて痛くて、それなのに逃げようという気持ちも戦うという選択も起きることがなかった。


あともう少し、もう少し。


「ママ、落ち着いて、まだパイの作り方、マスターしてないんだ…また教えて欲しいんだ」


あと少し、あと少し。


「…やめなさい」


声が弱弱しい。


炎の痛みは感じられない。
それどころかトリエルはわざと炎に当たる事がないように攻撃している?
フリスクはトリエルから目を逸らすことなく訴えかける。


「ママ」


「やめて」


「ママ!」


「…………」


攻撃が、止んだ。


「……ハハハ…」


トリエルは上げていた腕を下ろし、顔を下に向けたまま、静かに声を出した。


「………殺るなら今よ」


トリエルは小さな子供のフリスクが殺しやすいように、と膝を床につけてしゃがみこんだ
その声と発言に多少、ゾワッとしたがフリスクはトリエルに近づいていく。


「もう、戻る事なんてできないのよ。こんな私を見て、失望したでしょう?憐れんだでしょう?」


一歩、また一歩とトリエルに近づく。


「私はここを出て行ったあとの子供たちを知っている。みんな死んでしまった。……アズゴアの手によって…」


フリスクの手がトリエルに触れられるまでの距離になる。


「情けないわね。子供ひとり、救おうとしてはから回って満足に救うこともできない」


トリエルが目を閉じて覚悟を決める。
するりと首元になにかがが巻き付くような感覚がトリエルを包み込んだ。
苦しくはない。むしろ温かさを感じるほどだった。


驚いて目を開けるとそこにはフリスクがいた。


トリエルを抱きしめていた。


「ママ、大好き。だからそんな悲しいこと言わないで」


その言葉に涙腺が緩んだか、ポロポロと大粒の涙が彼女の頬を伝ってフリスクのストライプシャツの落ちる。


「えぇ…えぇ…ごめんなさい、愛しい子…」



しばらく二人、地下の中抱きしめあった。



そしてトリエルが落ち着いたころ、抱きしめあっていた体を離し、トリエルの顔を確認する。
今まで亡くなった子供たちを想ってのことだっただろうし、目の周辺は当然赤くなっていた。


まだしゃくり声が残っているが、聞いてみる。


「ママ、大丈夫?」


「えぇ…情けないところを見せてしまったわね。これじゃあ母親失格かしら」


こう言う時は…。


「まぁ…そうだけど、本当に”骨”が折れたよね!」


…………………。


トリエルが顔を上げる。


……ジョークなんて分かるわけない。


なんとなく僕は気まずくなって顔を逸らす。


それに思い返せば今の発言はトリエルを侮辱しているんじゃないかと感じ、冷や汗も出てくる。


……………お願いだからなにか言って…。


「ふふふっ……」


トリエルが笑った。


その声に反応して顔を見る。やっぱり笑っている。


面白かったのだろうか?……どこが?
涙跡はあれど今度は声を大きくだして笑っている。


「あはは!おかしい!あなたってジョークのセンスがあるのね!」


どこが!?


…でも笑ってくれているならいいか。


トリエルの笑う姿が嬉しくて、僕も笑った。




「フリスク、あなたはどうするの?」


トリエルは僕に聞いてきた。


「どうするって?」


指を指す、その先に扉があった。


「あそこに進むの?」


そんなこと考えていなかった。
フリスクは考え込んだ。


その様子を見てか、トリエルは言った。背中を押すように。


「この先に私の知り合いがいるの。信頼できるモンスターよ。彼に頼るといいわ」


「ここはあなたには狭すぎるもの。もっと広い世界をみてきて。そしてその話を聞かせに戻ってきて。……約束…できる?」


小指を出してくる。
僕はなんの迷いもせず、自分の指を絡ませた。


「うん!!」


ゆびきり、げんまん。


今度はトリエルから抱きしめられる。
温かい。フリスクも抱き着いた。
この世界にたった一人しかいない母親に。
この時だけでも時間が止まってくれたらよかったのに。


名残惜しそうに体を離す。


今更ながら外へ行く不安がこみあげてくる。


そんなフリスクを察してか、優しく頭を撫でて、いつも見ていたあの笑顔でこう言った。


「いってらっしゃい」


僕はこの手に何度救われてきただろう。


決意が満ちる。


最後は僕なりの特別な笑顔を彼女に向けた。


「行ってきます!」


扉を開ける。もう振り返らない。


重々しい扉とともに扉は閉まった。


扉の先は先ほどの地下の構造と一緒だ。
長い廊下。
少しばかり風が入ってくる。砂漠だからか冷たくはない。生ぬるいだろうか。


先を抜けると、そこは暗い一室。


そこに、フラウィーがいた。


「ハウディー!」


「いやー賢い賢い。ホントにおりこうさんだなぁって自分でも思ってるんでしょ?わーすごいさすがだよー」


明らかに心の籠っていない口調だ。


「今回は殺さずに済んだけれど、死んで死んで死に飽きちゃった時、キミは一体どうするんだろうね…?」


「この世界はね、殺るか殺られるかなんだよ?…それともなに?殺した罪悪感でもあった?」


「まぁいいや、一つアドバイスすることがあるんだよ」


フラウィーが一呼吸整えて、言った。


「神様はね、invaderが大っ嫌いなんだ」


invader?インベーダーとはどういう意味だろう?


「アハハ!意味なんて教えないよーだ!このことはお前がよく知ってるだろ?…ともかく!僕は見てるからね」


フラウィーは不気味な笑い声をあげながら地中へ潜っていった。


顔を上げるとそこには出口がある。


近づいて手に触れさせて思い切り力を入れて扉を開く。
空いた扉の隙間から光が舞い込んだ。





トリエル    ACT       end


トリエル、ACT編終了です。
今回のはトリエルとフリスクに信頼関係があったからこそできたことです。
原作とはだいぶ違ったSANDTALEらしくなってきました。
ruinsが出てからが勝負どころです。

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