sandtale-fromのブログ

UNDERTALE AUになります。砂漠化の世界、救うのは一輪の金色の花

ruins  帽子を被ったあの子


あんなことがあったせいか、気分もあまりよくない。


ベッドから降りて、いつものストライプのシャツを着る。
寝すぎてしまったせいもあるのかな。そう思いながら、部屋を出る。


リビングではトリエルがスープを作っていた。
パイを作っていないのは珍しい。


部屋の中はふんわりと優しい香りが充満していた。


トリエルが振り向いてフリスクを認識する。


そしていつものように微笑んだ。


「おはよう、フリスク。朝ごはんはできてるわ。まずは顔を洗ってきなさい」


「うん、おはよう、ママ」


なんとなく会話がぎこちないのは昨日のせいだろう。


あんなことは初めてだったから、互いにきまずい。


洗面所がないので、キッチンで顔を洗うことにした。
蛇口をひねれば、透明な色の水が出てきて、手で水を掬い、顔を洗う。
砂漠なのに、水がでる理由。それはトリエルが雨を降らせているから聞いていた。
この砂漠の世界で水は貴重だ、トリエルの恩恵ははすごい。
昨日出会ったフロギットもその雨の恩恵を受け生きていられるようだ。
カエルの姿なのだから水がなければ生きられないのだから当たり前か。


ともかく、トリエルはとてもすごいモンスターなようだ。


僕は、ここにいてもよいのだろうか?
トリエルは自分の子のように愛してくれるけれど、こんな僕で本当によいのだろうか。


そんなことを考えながら水に濡れた自分の手を見やる。
あぁ…本当に…いいのかな。


側にあるタオルで顔を拭いた。
すっきりしているのかしていないのかわからない顔が鏡に映る。
にっこりと鏡に向かって笑ってみせる。
笑え……ているのか?
もともと薄目だし、口角が上がっているようにも見えない。


目を開いてみる。
そこには浅緑色の瞳が映っていた。
目が鏡と反射して自分の顔が映り込む。
うん。やっぱり言われた通りだ。僕の目つきはあまりよくない。
それで何度もみんなから嫌われてきたから仕方ない。
自分の……いや、思い出すのはやめよう。


いつもの薄目の自分に戻る。


こっちのほうがみんなから嫌われないだろうし。


リビングに戻る。
トリエルがお皿にスープを盛ってくれていた。いつもの優しい顔。


「さあ、食べましょう?」


子供用の椅子に座る。トリエルは僕の斜めの席に座る。
スープにはソーセージとトリエルが自家栽培しているという野菜たち。カタツムリは…はいっていないようだ。


「いただきます」


手を合わせる。食べるときはそうするんだって教えてくれた。
スープを口に運ぶ。


おいしい。どんな味かといわれるとよくはわからない。
でも安心する味だ。


…会話…。なにか会話になるもの…。



……………。


……………………。



なんにも思いつかない。


………いろんなことをしてきたせいか。


心も気分もあまり乗る気ではないようだ。


スープもおいしいはずなのに、味気なく感じてしまう。


トリエルが食事を終えた。


「ごちそうさま」


そういって手を合わせている。


「フリスク、今日は地下にいるから、なにかあったら大声で呼んでね。地下には降りてきちゃダメよ?」


少し気になったことを聞いてみようか。


「前から思ってたんだけどどうしてダメなの?」


僕の質問にトリエルは少し焦っているような表情を見せている。
何か、悟られたくないような、そんな表情。


「ほら、地下は散らかっていてほこりっぽいし、風も入ってくるから気温差もあるし
風邪をひいてしまうわ」


風?地下に?


「ともかく!おうちでよい子で過ごしてね。お皿はテーブルに置いたままでいいからね」


片付けを終えて早々に地下へ降りて行ってしまった。


まだ、スープは残っている。
残すのも癪だと思い、口の中にかきこんだ。


「ごちそうさま」


手を合わせて食べ物へ感謝の言葉を告げた。
言われた通り、お皿とスプーンはテーブルは置いたままにした。


さて、今日は何をしよう?棚の本はカタツムリの本や勉強用の教科書。
教科書で勉強するとトリエルは喜んでくれるが、僕はあんまり勉強は好きじゃない。


もう一度、外へ行ってみようかな。
また、モンスターに会うかもしれないけれど、逃げていれば大丈夫だろう。


HOMEにいることに飽きてしまったから、刺激を求めるのは当然といえば当然だった。


お守りは使わない。


そう決めて、HOMEのドアを開いた。


外は太陽が顔を出していた。雲が一つもない。直射日光が暑い。
昨日はフロギットに意識が向いていて、周囲に目が向かなかったが、HOMEの外壁は薄目のピンク色でかわいらしい清楚だった。
地面はHOMEと同じ色の石畳。その上はどこにでも散らばる砂がかかっている。
ところどころに薄い茶色の大きな岩があり、これは、遺跡の後だろうか、HOMEと同じ色の柱が欠けたまま残っていた。


石畳の上を歩かなければ間違って砂に埋まってしまうかもしれないな。


石畳の道を進むことにした。


ここに来た時のスニーカーのままだから砂が入るのは致し方ない。


進んでいくとビニールでできた家がある。
あれは、なんだろう。覗いてみるとそこには色々な野菜が植えられていた。
砂漠のなかでも生きられる植物のようだ。
とげとげとしているもの、茶色のような黒に近いような色をしたとても堅いもの。黄金色のような葉っぱ、様々だ。


少し見ただけで十分だ。ここに興味はあまりわかない。


違う所へ行こうとすると、何かが砂を踏む音が聞こえた。


僕はなにも見ないように急いでその場を離れることにした。
また昨日のようなことは嫌だったからだ。


しばらく走っただろうか。
モンスターに会いたくなくて走って来てしまったがここがどこか全く見当がつかない。
走りすぎてしまったようだ。


大きすぎる岩のせいで周辺を見ようにも視界が遮られる。


とりあえず岩の形を頼りに進んでいくしかないかと思いながら来たであろう道を戻っていく。


……わからない。


ここは一体どこだろう。


完全に迷子になってしまったようだ。


途中、羽の生えた大きな虫と一つ目のモンスターに出くわして逃げたり、野菜かと思ったらモンスターで、逃げて逃げてを繰り返していたらこんなことになってしまった。


疲れて、岩の日陰にいく。
足を動かしていても考えてしまうのだが、動かしていないとなると余計に考え込んでしまう。


このまま、家に帰れなくなったらどうしよう。
そんな言葉が思いながらも進んでいく。


帰れなかったら?もう二度とママに会えなかったら?
あの優しい笑顔を見ることができなくなったら?あの白い毛で包まれたふわふわした手と腕で頭を撫でられることも抱きしめてもらうこともできなくなってしまったら?


なぜか鼻がつーんとして、熱くなってくる。
あんな言葉を最後にして、もう会えなくなってしまったら?


目から水が流れて口のところへ流れていく。しょっぱい。



「ううぅ……。」



うずくまり、顔を腕で隠して一人で泣いた。
ママの言っていたことを守らなかったから。


後悔して後悔してを頭の中、繰り返す。
心まで苦しくなってきているようで鼻水もとまらず、呼吸も苦しくなってくる。


それにかかわらず、空はいまだ攻撃的な日の光を放つ。


「あ………君…大丈夫……?」


おどおどとしているような声が聞こえた。


モンスターか…?
逃げないとと思う気持ちがないのは心が弱っているからだろうか、なんの気力もない。


「……あぁ………そうだよね…ごめん、そんな気分じゃなかったよね……」


ずいぶん弱弱しい声だ。
ほんの少しだけ顔を上げてみる。


…?
白い。それと少し透けている…?


「…どうしよう……どうしたらいいかわからないや……あぁ…どうしよう…まだ泣き止んでくれない…こういう時メタトンがいてくれたら…」


その白い物体から、なにかが落ちる。水滴?
泣いているのだろうか?泣いているのはこっちだってそうなのに。


「あ…そうだ。これならどうかな…」


そう言うとなにやらいそいそと何かをしている。


でもまだ僕は嗚咽が止まらなくて、ボロボロと目から水が流れていく。


「みて…これ、ヒヤリハットって言うんだ」


…………。


反応を楽しみにしているのは伝わるのだが、まだ顔をあげられる状況ではないようだ。


「ヒヤリハットだとダメだった……?じゃあおしゃれブルックに改名するよ………」


どうやら慰めてくれているようだ。
エグッと鳴る情けない嗚咽を何とか我慢しながら頑張って声のするほうへ目を移す。


真っ白な体で手足がない。大きな目に穏やかな顔をして、ヒヤリハットもといおしゃれブルックと名乗っていたであろう茶色で黒いラインの入ったのソフトハットの帽子。カタツムリのバッジがついている。お化けというにふさわしいモンスターだった。


「あ……。………大丈夫?」


フリスクよりも1.5倍ほど大きいだろうか。


「ごめん、なにか食べ物でもあったらよかったんだけど何にも持ってなくて…あぁ…ほんと僕って…」


励ましているように聞こえるのにずいぶんとネガティブな発言ばかりする。
それに帽子がお化けなのに妙に似合っていた。


あれだけ悲しくて苦しかったはずなのに、なんとなくおかしいという気持ちになっていた。


涙はいつの間にか止まっていた。


「………泣き止んだ…?落ち着いた……?」


お化けが顔を覗き込む。フリスクの表情を読み取ろうとしているようだ。


………………。


しかし、お互いどんな感情を抱いているのか顔を見ただけでは全く見当がつかなかった…!


「君、どこからきたの?…あ……初めましてがまだだったよね。僕はナップスターブルックっていうんだ…」


沈黙の時間が長かったせいか、このナップスターブルックというお化けに気が抜けたからか気持ちは落ち着いていた。
声を出すことができそうだ。深呼吸をして声を出す。


「僕は、フリスク」


「フリスク…フリスク……うん、覚えた。君はどうしてこんなところにいるの…?」


「迷子になっちゃって…おうちに帰りたいのに道がわからないんだ」


またじわっと目頭に涙がでそうになる。


「そうなんだ…僕、よくここに来るから道案内できるよ…おうちっていったらあそこかな…?一緒に行く?…この辺に君ぐらいの大きなおうちはあそこしかないから……」


「本当に!?」


一気に顔をナップスターブルックに向ける
いきなりなものだからびくっと体を震わせていた。


「う………うん……急いだほうがいいよね。ついてきて…」


「うん!…ねぇ、ナップス……じゃ長いからナプスタって呼んでもいい?」


「…! うん、好きに呼んでよ」


一緒にHOMEに着くまでいろんな話をした。
曲を聞いたり作ったりするのが好きな事、アイドルをしている友達の話、家に遊びに来てもいいよという話を。


途中、モンスターがところどころにいたが、ナプスタと一緒にいたおかげか襲ってくることはなかった。


そして、信じられない光景が映ったのだ。
あのカエル、フロギットが目の前にいた。


「! フロギット?」


「…? 知り合い?」


なんでこんなところにいるのだろう。まさか僕に会いに来たのだろうか?


いや、違う。同じなように見えてほんのちょっぴり大きさが違う。


あの時のフロギットとは違うようだ。


ゲコゲコと鳴き声を出している。


どんな事をいっているのかよく耳を傾けて聞いてみた。そうでなければ聞き取れないのだ。


えっと…いつも…気弱なあいつ……同じフロギット…いない……どこにも…。



………………。



そっかそっか。
本当にどこにいったんだろうね?


踵をかえしてナプスタのところへ行く。


「もういいの…?楽しくお話…僕も入りたかったな…」


「ごめんごめん、でも早くおうちに帰らないといけないからさ」



HOMEへ向かう。
もう家はすぐ近くだ。



でも、何となく帰りにくい。


「…あのさ、ナプスタ」


「ん…?」


「なんか、昨日から、ママと話すのが気まずいんだ。どうしたらいいんだろう」


ナプスタはうーーんと唸って、こう言った。


「よくわからないけれど、会うのが難しくなって…話す機会が少なくなって……そんなの考えたら……なんか…言葉がうまくまとまらないや…ごめんね……」



もう会うのが難しくなったら…話す機会が少なくなって…か…寂しいなあ…。


「うん、わかった。頑張って話してみる」


「そっか……よくわからないけど…力になれてよかった…」



HOMEに着く。薄いピンクの家。うん、ここだ。


「ナプスタ…ありがとう。お別れだね。また会えたら今度は遊ぼうよ」


「うん、楽しみにしてるね…今日はいい人に出会えた…じゃあねフリスク」


そういうとナプスタはスーッと消えていった。
完全に姿を消すのを見送ったあと、僕は決意を抱く。


今日はママといっぱい話そう。楽しいことをしよう。


HOMEに入る。


「ママ!ただいま!」


挨拶をするも返事がない。
リビングで本を読みながら寝ているのかと思うもいない。部屋にもどこにもいない。
キッチンを見てみる。いない。そこにはいつものバタースコッチシナモンパイが切り分けられていた。


あ、一切れ持って行ってあとで食べよっと。
ラップでパイを包んで持っていく。あとでおやつとして食べよう。


地下にいるのかな?
大声で呼んでって言っていたはず。


「ママーーー!!」


反響する自分の声が響く。


聞こえていないのかな?
地下に降りてみることにした。暗い。壁につけられた光だけが頼りだ。


そういえば、地下に風が入るとトリエルは言っていた。
矛盾している言葉をフリスクが聞き逃すはずがなかった。


だから、ほんの少しわくわくしていた。一体なにがあるのだろう。
もしかしたら地下は洞窟でとてつもなくすごいお宝が隠されているのかもしれないと気持ちが昂る。


っとその前にママにちゃんと昨日はごめんなさいって謝らないといけない。
ここにいるといいのだけど。


進んでいく。とても長い廊下。
その先にあったのはとても大きな扉だった。


なにかの紋章が書いてある。
真ん中に丸があって左右に翼のようなもの、下に三つの三角。


不思議とは思うが思い返すとトリエルもこの紋章と同じ服を着ていたような気もする。


扉に手を触れようとした。その時だった。


「なにをしているの!!!」


突然の大声に体が想像以上に跳ね上がる。
この声は聞き覚えがある。
いや、こんなに声を荒げることなんてないはず。


違っていてほしい。そう願って振り返るもその願いはすぐに壊された。


そこにいたのは、とても悲しそうに僕を見つめるトリエルだった。




ruins          帽子を被ったあの子  end



次回、トリエル戦です。
途中のフロギットでみなさんはどう思ったのでしょうね?
ひとそれぞれ…ですよね?
それはそうとナプスタくんが出ると「…」を使う率が高い高い。
トリエル戦もFIGHT、ACT編を書かせていただきます。
欲張って両方みるのは良いですが今回のフロギットのときの気持ちのようになることを考えてくださいませ。

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