番外編 1
これはフリスクと呼ばれる人間がフィリア砂漠に来る前の……遠いようで、最近起こったこと。
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「この古代文字の法則。私にはよくわからないんだ。なんの暗号だろう」
薄暗い地下の部屋。
ここは【叛逆の遺跡】と呼ばれる場所。
なぜ叛逆などと言う物騒な名前なのかは分からない。
気が付いたらそういう名前になっていたのだから誰もその理由を知らないし、知る必要もないし、知ろうとも思わない。
その一角で、ランプを持った影が壁に書かれている文字とにらめっこをしていた。
「…全く…意味が分からない文字だ…」
ポストのような絵、どくろのマーク、◇に□のマーク、様々な文字が並んでいる。
全く意味がわからない。
そもそも文字と呼んでよいのかもわからない。ただの子どものイタズラ書きにも見える。
「……はぁ…これじゃいくら書き記して解読しようとしても意味がない…この文字?さえ分かってしまえばこの砂漠から出られるヒントを得られるかもしれないのに…」
狭い室内に大きなため息が響く。
壁に書かれている文字をノートに書き記していく。
「早く帰らないと日が沈んでしまうな…どうしようか…みんな研究に没頭しすぎてピリピリしてそうだなぁ…帰るの気が重いなぁ…。なにか食べ物くらい持って行けば少しは…またカップ麺になるのか…。おいしいけどホットランドまで買いに行くのとても面倒なんだよな…」
さっきほどではないがため息を吐く。
ポペトチッスプでも買って帰るべきか…。
別にお腹が空かないのが僕たちモンスターなのだけど、食べ物は娯楽だから気を紛らわせるのに最適なものなのは変わりない。
研究員は【4人】
互いに、思いあいながら生きている。
そういえば、セカンドが言っていた。
「僕たちの生きる過程において重要なのは【誰かを想う心】… でも思わない? もし、その心を失った時、モンスターはどうなるのか」
あれはとても興味深い話だ。
人間と違い、食事や水を取らなくても生きていけるその原理。
そのことに誰も疑問として問うことがなかったから。
モンスターの死、人間との争いがなくなってからは寿命で亡くなるのがほとんど。
子が大人になるまで。子どもに自分の持つ力を与えてから死ぬ。
だから、アズゴアが死ぬ時…それは新たな王の誕生を意味する。
そう、アズリエル・ドリーマー王の誕生である。
死んだ者は塵へと還る。
埋葬はこの砂漠の砂とともに生きれるように…と塵を風に乗せて砂へ還す。
そうすれば、塵は砂漠の砂となり、みんなを見守るとされている。
死んだのではない、砂漠の砂となっただけだ。
それが、この世界の習わしだ。
「…仕方ない、帰りながら考えるか…」
影はランプを持って、叛逆の遺跡を後にした。
………………………。
『古代文字にはこう刻まれている』
☹♏⧫ ⧫♒♏ ⬧⧫❒□■♑♏⬧⧫ ◻♏❒⬧□■ ⧫♏●● ⧫♒♏ ⧫❒◆⧫♒ □♐ ⧫♒♓⬧ ♎♏⬧♏❒⧫
『最も強き者に、この砂漠の真実を知る権利を与えよう』
彼らは知らない。これから起こることも。
自分たちの存在が消えて、新たな存在が誕生することも。
それが【Gaster】と言う名になることも。
番外編 first followerの記憶 end