sandtale-fromのブログ

UNDERTALE AUになります。砂漠化の世界、救うのは一輪の金色の花

Waterfall 歌う砂



走る。ただ走る。
走りにくいこの砂漠の中を。


まさかサンズが助けに来てくれるとは思っていなかった。
もしかするとパピルスとの稽古も見られていたかもしれない。
そう考えて冷や汗が出てくるような気がするが、今はそんなことよりもあのアンダインと呼ばれたモンスターから逃げるのが先決だ。


後ろで、なにかがぶつかり合う音がする。
戦っているのだろうか。


フリスクは振り向かずに前だけを見て、矢印が向く先を行く。




ブォンとアンダインの槍が形成される音が聞こえる。


それも一つではない。
10…いや、20はあるだろう。矛先を目の前の藍色のモンスターに向けて確実に当たるように一斉に降りかかる。


藍色のモンスター、サンズは口角をニヤリと上げて、20ある槍をしゃがんだり体を反らしだり、自分の体を巧みに操って悠々と躱しながらからかうかのように言った。


「わぁ…こりゃまるで雨だな。しかも甘くもない飴だ。あぁ。今のはかけたんだぜ?雨(飴)と攻撃に甘さがないって意味でな。…これ褒めてるからな?だが…槍の雨(飴)なんて正直欲しくはないな」


「サンズ!ふざけているのか!!いいからそこをどけ!人間が逃げたらどうするんだ!」


サンズがジョークを言っている間に槍の猛攻が終わった。
彼にはかすり傷ひとつない。それどころか、長いマントすら破れているところがない。


「あいつは逃げねぇさ。焦る必要なんてないだろ。俺としても今あいつに死なれちゃ困るって言ったろ?」


「……キャラ様か」


「あぁ、そうだ。だけど無理に王のとこに帰すのは俺が許さない。わかってるな?」


「………キャラ様はアズゴアと一緒に暮らしたほうが幸せに決まってる!家族と暮らしたほうがいいに決まって…!」


「家族全員がバラバラになったまま、父親のところに帰して…それからどうするんだ?キャラが本当に独りぼっちになる可能性だって否定できない」


「…それはアズゴアがあの人間にやられると…?お前はそう言いたいのか?」


「……可能性としてもないわけじゃない。だが、もうこれで最後だ。決めるのは王だ。今までも、これからも」


アンダインはうつ向いて肩を震わせて歯を食いしばっていた。


「……だから全ての責任をアズゴアに押し付けるつもりか!!!!お前は何も分かっていない!!!あの方がどれだけ苦しんでおられるか!!たった独りで6人の子どもを殺してきたこと……!!お前にあの方の苦しみなど理解できるわけがないッッ!!!!」


アンダインがまた槍を構える。


「はぁ~……”理解できるわけがない”ね……それは俺が言いたい言葉だよ…。逆に聞くが、この世界が全くの別物だったーなんて言われたらお前は信じられるのやら……。はぁ~…俺の考えてることなんて誰も理解できねぇよ。ましてや、あんなチビがカ……おっと、これは言っちゃまずいな。忘れてくれ」


セリフを無視して、アンダインはサンズにとびかかるように襲い掛かる。


サンズはその攻撃を受け入れるかのように砂を蹴り上げてアンダインに特攻する。


アンダインが右手に持つ槍を薙ぎ払う。


それを目で追って、前腕で受け止める。


受け止められ、アンダインは左足を蹴り上げる。


ニヤニヤとした表情は変わらない。


槍を受け止めた腕を離し、逆に掴んだと思えば、そのまま左に倒れこんだのだ。


片足だけで体を支えている今のアンダインでは骨であるはずのサンズの体重でもいとも簡単にバランスを崩し、一緒に倒れこむ。


サンズはその様子を見逃さない。


手から槍を離し、両手を地面につけたと思えば、肘や膝、体を曲げ、逆立ちのような状態になる。


アンダインが焦りの表情を見せる。


体全体をばねにするように勢いをつけて


バランスを崩し、倒れそうになるアンダインの顎へ


一気に蹴り上げる!



「…!!!」



咄嗟に首を動かして回避。


サンズの左足が顔を掠る。


躱したことをすぐに理解して口角が上がり、左手でサンズの足を掴む。


不安定な砂の上、しかも今にもバランスを崩し、倒れそうになっている。
ただ、二人とも意味は違えど、その表情は笑っている。
サンズはアンダインと遊んでいるという楽しげな笑みで、アンダインは捕まえたとでも言いたげな獲物を捕らえ、喜ぶ獣のようだ。



まだ戦いは終わらない。





「……はぁ……はぁ……」


歩きにくいうえにまだお昼ではないにも関わらず暑いこの砂漠を走り回るのは流石に危ないものがある。


キャラからもらった水筒から水を出し、ごくごくと飲む。
喉が渇いていたせいか、勢いよく飲んでしまったせいか、口の端から水がこぼれてしまい、顎に向かって流れていく。


「くそ……もったいない……」


口端から零れてしまった水を拭い、手に付いた水をなめる。


必死に走っていたから気づかなかったが、看板には【あと少しでオアシスだよっ☆ファイトファイト☆】と書かれている。


なんとなくむかつく文面なのは置いておこう…。
きっと暑さと走った疲労でこんな思考になっているだけだ。


息を整える。
空は嫌になるほどの快晴だ。
砂が小さな山になっているかのようで、前が遮られ、地平線は見えない。
砂の山を登っては降りて、登っては降りてを繰り返す。


急斜面の山もあれば緩やかな山もあって、疲労していく。


そういえば、初めてこの砂漠に足を踏み入れた時もこんな感じの砂漠の地形だったような気がする。


山を登る。
膝が悲鳴を上げそうだ。
あと少しで着くっていつだ。もう疲れてきた。
でも休憩していたらいつアンダインがくるか分かったものじゃない。


キュッキュッ


わずかに足元から音が鳴っている。
視線を下に向ける。


………………………?


足を動かしてみる。


キュッキュッ


砂を踏むと音が鳴るようだ。
わずかな音だから、よく耳を澄まなければ聞こえないが、確かに聞こえる。


踏むと音が鳴る砂。不思議な砂だなと思いながらも、今はオアシスに向かう事が先決だ。
追われたり、砂漠を進んだりで、水筒の水が減っている。
あとどのくらいだっただろうか。無計画に飲みすぎた。
これからは水の残っている量を把握して、計画的にこまめに飲まないといけない。


はぁはぁと息を切らす声とオアシスに近づくたびにキュッキュッと音が鳴る砂だけが少年の耳に届く。


どうやらオアシスに近づいていくほどに砂を踏む音は大きくなっていくようだ。
日はいまだに容赦なく襲い掛かる。


砂山を登って一息つこうと思った時、見下ろすと青々しい草が生えているのが見えた。
その草の中心には透き通った色の大きな湖が見える。


はぁはぁと口から息を吐き出し、看板を見やる。
【おめでとう!オアシスに着きそうだね!!ヽ"(❍´∇`)ノ】


ムカつくのはやっぱり気のせいではないようだ。
看板をへし折りたい気持ちに駆られる。


とりあえず…あそこがオアシスであることは間違いないようだ。
ならここで休憩するよりもあそこのほうがいいだろう。


登った砂山を慎重に降りていく。
急な坂ではないが、足場はよくない。
滑り落ちそうになると砂はまるで悲鳴でも上げるようにキュウウウウウウウウと鳴く。
なんとも面白い砂だろうか。今はそんなことを考える余裕はないのだが…。


【ここがオアシスだよ!お疲れ様!お水はオニオンさんに聞いてね!】


看板にはそう書かれている。


オニオン?


青々とした草むらに入る。あのちくちくした植物は見当たらないのが救いだった。
上から覗いたときは分からなかったがフリスクの身長を容易に越える植物が中にある湖を守っているかのようだ。幸い、フリスクでも通ることのできる幅はあるようだ。


草をかき分けて進む。砂漠にも関わらず思った以上に草が生い茂っている。
どうしてだろうか?


疑問が浮かぶが、今はそんなことよりも先に水を補給して早く行かないと…。


進んでいくとなにやら話し声が聞こえる。
声は少し低い。アンダインやサンズではないようだ。


少し草むらに身を潜めて様子を伺う。


「オニオン、最近元気がないね。なにかあったのかい?」


「………あのねー今日の雨が少なかったのーこのままだったらオニオン、ここのお水もなくなって、生きられなくなっちゃうかもーって思ったら…あ!…ちょっと怖くなっただけだよー心配しないでー」


湖の中に大きな頭が見える。遠目から見ても明らかにフリスクの何倍、いや、何十倍も大きい。
その近くに白い羽のようなマントで髪を三つ編みにした人が見える。


あれは…人間…?似ているような気もする。
よく見ようとして植物から身を乗り出すとキュッと砂が鳴く。


「?誰かいるのか?」



まずい、隠れないと。


そう思い、隠れようとするも砂がフリスクの場所を知らせるように鳴き続ける。


「そこにいるんだね。大丈夫だよ。出ておいで」


隠れているフリスクに声をかけているようだ。


もうばれてしまっている、仕方ない。


植物の中から現れる。後ろから遠目で見ただけでは分からなかったが三つ編みの人物は灰色の髪の中に橙色のメッシュが三つあり、右目を隠している。
肌も灰色で、腕は明らかに人間に似ていない。
人間ではないことは確かだった。


「ん……ずいぶんと可愛らしいお客さんみたいだね」


「初めましてだねー!お水貰いにきたの?」


大きな頭のモンスターが目をキラキラさせて僕に質問する。


「あ…うん。そうなんだ。少し貰ってもいいかな?」


「いいよー。オニオンさんのお水あげるよー」


キラキラした目からぽけーと呆けた顔をするモンスター。
なんというか、すごくアホ面をしているなぁ。
気の抜けるというか、表情が豊かというか…。


水筒を出して水を汲む。
濁り気のない水は太陽でキラキラと輝いて水面からフリスクの姿が反射して見える。
三つ編みのモンスターが話しかけた。


「えっと…ここに来るのは初めてかい?いや、この辺りじゃ見ない顔だからさ…」


顔を上げて彼を見る。すごく優しそうな目つきだ。


「あ…そっか、こういう時は私から名乗らないとね…!私はメタトン、初めまして」


メタトンと名乗ったモンスターはお辞儀した。とても礼儀正しいようだ。悪意はなさそうに見える。


「メタトンはねーみんなのアイドルなの!色んなところに行ってみんなに声かけてくれるの!とっても良いモンスターなの!」


「お…オニオン…そんなことないよ。アイドルだなんて恥ずかしいよ…」


「でもこの辺りに住むモンスターみんな、メタトンのこととっても大好きなのよ!ボクも大好きなんだー!今日みたいにボクの所に来て楽しいお話いっぱいしてくれるし、面白いこともいっぱいしてくれるんだー今日だってねー…」


「オニオン、もうやめて…」


メタトンが恥ずかしそうに手で顔を覆っている。


「えーメタトンの魅力、まだ語り終えてないよー」


「いいから!!えっと…んんッ……君、名前は?」


咳払いをして僕に質問しているようだ。


「僕はフリスク」


「フリスクねーいい名前だねーボクはオニオンさんだよーよろしくねー」


そういうと湖から身を乗り出して腕であろう触手を出してうねうねとフリスクの前に差し出した。握手…ということだろうか。
触手を掴むと湖の水で濡れていてこっちの手も濡れてしまった。


「わーい!握手ー」


オニオンは目を輝かせて嬉しそうだ。
それを見てメタトンが微笑んでいる。


「じゃあ、私はそろそろお暇するよ。新しいお友達もできたみたいだしね」


「えー行っちゃうの?メタトンとフリスクと一緒にお話ししたかったのにー残念…」


「ごめんね、オニオン。アルフィスに呼ばれてるんだ。最終調整のためにね。本当は完成してるんだけどさ、アルフィス、心配性なんだ…一大イベントだからね!渡した端末、なくさないようにね」


「はーい、分かったよーメタトンまたねー」


「じゃあね、ダーリン♪」


ニコッと笑いかけてメタトンはオアシスを出て行ってしまった。
砂を踏む音が遠ざかっていくのが分かる。


その音をオニオンとフリスクは聞こえなくなるまで耳を澄ませていた。


……これからどうすればいいのだろう。
メタトンについていけばよかったのだろうか…。


そう悶々としながら考えているとオニオンが話しかけた。


「あのねーこれね、メタトンがくれたのー。これから使うらしいんだけど、ボクにはよくわからないんだ。フリスクは分かるー?」


オニオンが手に持っていた物を見せる。
四角い黒い物体。モニターのようなものがついているようだ。
思いついたものがあるのでそれを伝えてみる。


「テレビか…それに似てないかな…?」


「テレビってなあに?」


オニオンが首をかしげて問いかける。


どう説明したらよいだろうか。


「えっとね…遠くにいる人が見えるものなんだ…分かるかな…」


「んー?そうなの?すごいねー。あ…メタトンにこれ返すの忘れてた…」


オニオンがなにかを草むらから取り出した。
これは赤い大きめの容器に……虫眼鏡か…


「これねーメタトンが使うんだーって言って見せてくれたんだけどそのまま置いていっちゃって…中身はなにか臭いし大事なものだと思うんだけど返すのいつも忘れちゃって」


赤い容器の蓋を開けて匂いを吸い込んでみる。


うえっ……!!
なんだこの匂い


勢いよく吸い込んでしまったせいで鼻が曲がりそうになる。
匂いを体内から逃がそうとしてゲホゲホとせき込むも匂いが口の中まで充満するようだ。


うえええ…………


「ご…ごめんね、大丈夫…?」


オニオンが心配そうに背中をさする。


「うん。気持ち悪いけど大丈夫…」


「これね、あんまりお日様に当てるとマズイんだって。だからお日様に当たらないように日陰に隠してるの」


メタトンに渡しに行ってもよいのだが、かなり大きい容器で、運ぶのは出来なくはないのだが今はアンダインに追われていることもあって容易に渡しにいこうかと言う事ができない。


「そっか。オアシスに住んでいるのはオニオンさんだけなの?」


「え?そうだよーみんな陸に上がって行っちゃったの!砂だらけの場所より水の中のほうが快適なのにね!まぁ…ボクは体が大きすぎて出られないんだけどね。でもいいの!みんながオアシスにくるの楽しみだから!」


コロコロと表情を変えて話すオニオン。


「あ、アンダイン今日はまだ来てないなーアンダインって分かる?」


アンダイン、フリスクを殺す気でかかってきたモンスター。
あの獣のような顔を思い出すと少し顔が青ざめるのだが、きっと嘘はよくないだろう。


「う…うん…分かるけど…」


「アンダインはねー!すごいモンスターなの!毎日ボクの所にきて声かけてくれるんだ!今日はまだ来てないけど」


「そ…そっか…」


「アンダインはねー!みんなに声をかけてね、オアシスの周りのごみを拾ってくれてるの。ほら、この辺りって砂の音が鳴るでしょ?」


「うん」


「一度ね、この一帯にごみが溢れちゃって、砂の音が鳴らなくなっちゃったんだ。だから定期的にごみ拾いをしてくれてるの!ボクも綺麗な砂が好きだから嬉しいの!」


キュッ


砂が肯定するように鳴く。
ごみがあると鳴くことができなくなる砂。
まるで誰かに殺されてしまったかのようだと少し思った。


キュッキュッ


少しでも動けば砂は鳴く。


「なんだか歌を歌ってるみたいだよね、この砂。ボクはとっても好きなんだけどねーみんなもこの音が好きで来るモンスターも多いんだー。このオアシスは特に音が鳴りやすいの」


「そうなんだ」


確かに言われてみれば、このオアシス周辺はかなり大きな音だ。
メタトンやオニオンに居場所がばれても仕方が…………。


!!!!!
ここに居続けたら音でアンダインに場所がばれてしまう!!!


「オニオンさん!ごめん!僕、もう行かないと…!!」


「え?もう行っちゃうの?んー残念…またいつでもおいでー」


「うん!お水ありがとう!」


「ばいばーい!」


砂の音を鳴らしながら走り去るフリスクに、オニオンが手を振っていた。


ガサガサと草をかき分けて、オアシスから出る。


看板には【ホットランドはこっち!!かもんかもん!】と書かれている。
来た方向とは逆方向のようだ。


水は貰った。あとは計画的に飲んでいけば大丈夫なはず。


近くでキュッキュッと砂を踏む音が聞こえる。
しかも速足でかけているようだ。



まさかアンダインがサンズに勝って追ってきたのか…!!


音のする方を見る。
アンダインらしき姿は見えない。


その代わり、小さな生き物が走ってくる。


「ほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!!!!!こまッたのーーーー!!!!」


大きさがフリスクの膝下ほどで猫耳…?の他に左右に垂れ下がった耳…?耳が四つ…?の動物のようなつぶらな瞳のがモンスターがこちらを見ている。


………………………


なにか用なのだろうか……。


………………………………


にらみ合ったように沈黙し、見つめ合う二人。


そのモンスターがガクガク(プルプル?)と震えている。


あれ…顔がずれていってないか…?


「んんんんんんんん………!!」


目の前のモンスターが唸る。
これは、どう対応したらよいのだろうか。


「いやァァァぁぁぁぁぁぁぁ!!!やっぱり手ミーさんハズかしいのー!」


いきなり叫びだし、砂の上を転がり始めた。
砂はキュウウウウウウウウと大きく鳴きだす。


…なんだろうこのモンスター…手ミーって言った?


「え…えっと……どうしたの…?」


しゃがんで声をかける。


すると手ミーというモンスターはフリスクの顔を見て話し始めた。


「h0i!! 手ミーさんだよ! 手ミーさん、人間さんだいスコなの!! あとね! 手ミーさんきょうかしョどこかにわすれた!」


「教科書?」


「ソウ‼ それないと手ミーさん大学いけないの!」


教科書…今までのことを思い出してみてもそんなものはどこにもなかった。


「ごめん、僕もわからないや」


「イイの! いッかいおうちカエッテみる!」


そう言うと、手ミーはホットランドでもウォーターフェルへ行く方向ではない方へ進んでいってしまった。


大丈夫かな…手ミーの家ははずれのほうにあるのかもしれない。
ついていったところでなにかできるわけではないだろう。
今はアンダインから逃げるのが先だ。


ホットランドに向かおうとして、前を見据えた時だった。




目の前に色のない、灰色のドアがあった。




さっきまではなかったはずだ。
しかもこの広大な砂漠に家もなく、ポツリとドアだけが佇んでいた。


どういうことだろうか。


ドアの裏側を見てみる。
……なにもない。


開けてみるか…?


そう悩んでみるも、その思考は好奇心には勝てず、ドアノブに手をかけた。


が、フリスクがドアノブに手をかけるとドアは下から一気に消え始めた。
そのスピードはあまりにも早く、ドアを開く前に全て消えてしまった。


掴んでいたはずの手が空を掴む。


………? 一体なんだったのだろう。
疑問は浮かぶ。だが、その思考をかき消すようになにかが聞こえる。


………………………。


遠くで激しく砂が鳴く音。目を凝らすとそこには青いマントに青緑色のマフラーをしたモンスターと青く光る槍を形成して襲い掛かる茜色の髪のモンスターだった。


!!!!
まずい!もう来たのか!


フリスクは急いでホットランドへと続く看板を頼りに進んでいく。





まだ猛攻は止まない。


たくさんの槍を形成し、何度も何度もサンズに襲い掛かる。


サンズは反撃することなく、ただひたすらに躱す。


「サァァァァンズ!!いつまでそうやって躱し続けるつもりだ!!」


余裕そうに躱す彼は言う。


「えー?なんだって教え子に本気にならなきゃいけないんだよ。だいたいその戦闘技術を教えたのは俺"も"だろ?行動パターンくらい読める」


「なめやがって……!!!!」


アンダインが右手で握りこぶしを作る。


その腕を真下めがけて振り下ろす


砂が悲鳴を上げ、舞い上がる。


視界が砂に覆われる。


その機を逃さんと、今度は左手で握りこぶしを作る。


そしてサンズがいるであろう場所に向かって


真っすぐ正拳突きを放った!


その左手はサンズに当たる……はずだった。


アンダインの正拳突きをした周辺から砂がばらまかれ、地面に落ちる。
そこにサンズの姿はない。


「どこに消えたッッッ!!!」


苛立ちを隠せないアンダインが大声を上げる。
その声は遠くにいるフリスクにも確かに聞こえるほどだ。


「ここだぜ?」


真上。


その声と同時に背中からアンダインを踏みつける。


地面に伏せったのを、サンズは確認したかと思えばアンダインの左手を背中側に回した。


自分はアンダインが立ち上がらないように押さえつけながら。


関節技だった。


「もう終わりか?」


左手を徐々に回して痛めつける。


「………くっ……」


「だーかーらー、言っただろ、お前は感情に任せて敵に突っ込みすぎだ。そこはお前のいい所でもある…が、たった一人で戦うとなるとそれは命取りだ。さっきの砂で視界を奪うのはいい戦法だったがな。相手が悪かったな」


ぎりぎりと左腕の関節技を強めていく。


そのたびに痛みで表情が歪んでいく。


「ふざけるな…! アタシはお前とは違う! あの方のためにアタシは全てを捧げてやる!! いつまでも子供扱いをするなァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


その声と共に先ほどとは比べ物にならないほどの数の槍を形成する。


矛先はアンダインとその上に立つサンズだ。


「おい……! お前、まさか……」


「ともに死ね」


槍が一斉に二人に向かってくる。


このままでは二人とも槍でハチの巣になってしまう!


サンズはすぐにアンダインの拘束を解いて、槍を両腕で薙ぎ払い続ける。


全方向から向かってくる槍を骨や格闘ではじいていく。


バキバキと槍を折る音と砂の音だけが耳を支配する。


「ちっ……どんだけ作ったんだよ…!! アンダイン!! これ止めろっつの!」


何度も槍をさばきながら、嫌味を言う。


アンダインはゆっくりと立ち上がり、体を一回転させて勢いをつけると無防備になっているサンズの背中を蹴り上げた!


サンズの体は抵抗する間もなく砂の上に何度も体をぶつけ飛んでいく。


「悪いな…本当は後ろから狙うなんてことはしたくなかったんだが……」


目を逸らし気味に言っていたが、次に口を開くときには冷たく見下ろす瞳をしていた。


「”ちょっと”イラついたんでな」


飛んで行った方は砂が舞いあがっている。
だいぶ遠くに飛ばされたようだ。


「………後ろから狙うような奴に育てた覚えは全くないんだがな…」


砂が風にあおられて、周辺の砂ぼこりが消える。
彼の周りには大きな骨の竜が包み込んでいた。


マントは砂だらけで片膝をついた状態で、首の長い骨が、まるでサンズを守るように肋骨をむき出しにしてひどく唸っている。



にらみ合う両者。



「……仕方ねぇか。俺じゃ、止めることは無理みたいだな。こうなりゃやっぱ、こうなった原因である本人がどうにかしねぇと意味ねぇなこれ…」


ちらりと周辺を見る。


足跡が見える。子供の足跡だ。おそらく、フリスクのもの。


ニヤリと口角を上げる。


「よう、アンダイン、人間のとこに行きたいんだろ?連れてってやるよ」


サンズの言葉に面食らったのか驚いた顔をする。
すぐに疑いの目になったが。


「どういうつもりだ」


サンズが服についた砂を払いながら話す。


「いや、信じなくてもいいぜ? せっかく助けてやったのに恩を仇で返すような狭い心の持ち主に言うようなことじゃないもんなー」


その煽りの言葉にイラっときたのか、アンダインが叫ぶ。


「んがァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!! そもそも!! お前が来なかったらすぐに捕まえていたものを!! 勝手に邪魔したんだろうがァァァァァァァァ!!!!!!!」


「heh 鬼さんこちらー♪」


右目をウインクさせて砂を滑り降りる。
砂は悲鳴を上げている。


「まて! この野郎!!!!」


アンダインもサンズに続いて砂を滑り降りて追いかけっこが始まった。





後ろでなにか聞こえる。


振り返りたくはない…が見ないことには…。
振り返るとそこには、おちゃらけた表情のサンズとそれを鬼の形相で追いかけるアンダインだった。


「ひえっ……!!」


思わず、小さな悲鳴を上げてしまった。


二人とも走ってこちらに向かってくる。
人間の子どもであるフリスクが逃げ切れるはずもない。


走ることは走るが、案の定走ってきたサンズと並走する形になる。


「よう、ちびっこ。その様子だとちゃんと迷子にならずにオアシスに着けたみたいだな」


後ろからの殺気と走ることの疲労から、返答ができない。


「あー…突然で悪いんだけどさ…俺さ…そろそろ眠いんだわ。アンダインのお守り、頼んだぜ」


はい!?


そういうとサンズは大きなあくびをして、走っていたにも関わらず、急に転んだ。砂がまた大きな声を出す。
フリスクが驚いて立ち止まり、サンズを見る。


砂が柔らかいから怪我はなさそうだ。
アンダインも驚いたのか立ち止まり、一緒に様子を見ている。


「zzzzzzzzzz…………」


………寝ている…?
まさか…この状況下で…!?


「zzzzzzzzzzzzzzzz……………」


えっ…!?
嘘だろ……?本当に寝てる…!?


思わず、先ほどまで殺気の塊だったアンダインと顔を見合わせてしまう。


……………………………。


こういうときは……。


「逃げるが勝ちッ!!!」


即座に踵を返して走る。


「あっ……まて!人間!!」


眠ってしまったサンズを置いて、今度はフリスクとアンダインの追いかけっこが始まった。





Waterfall 歌う砂      end


なんだこの終わり方…。
追いかけられてばっかりですね。
オニオンさんと手ミー、そしてメタトンが出ましたね。
メタトンとはまた会うことになるでしょう。
手ミーさんのあの村はNルートでは行きません。Pルートをお楽しみに…。
今回は、”歌う砂”と明記させていただきましたが、本来の名は”鳴き砂”です。
あと…そうですね。あの灰色の扉の向こう、ある人物が慌てている様子が見えますね…。
さて、一体誰なんでしょうか。
次はアンダイン戦になります。いつもの如く、ACTかFIGHTか、どちらかになります。
よろしくお願いします。

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