sandtale-fromのブログ

UNDERTALE AUになります。砂漠化の世界、救うのは一輪の金色の花

ruins 神に愛された者



なんだろう。これは夢か。ずいぶんと色鮮やかな夢だ。
虹色。眩しい。そこへ行ってはいけない気がする。


誰かがいる。人の姿…?二人いるようだ。顔が全くわからない。
一人が僕に気が付いた。そして近づいて僕の手を両手で覆うように握った。
こんなに至近距離でも僕を見つめているのにこの人の顔が認識できない。
手を優しく握り、微笑んでいた。
まるで古くからの友のように。


そして、こう言ったんだ。


『大丈夫、君は神様に愛された者なんだから』





目が開かれる。
ここは?なにかに横たわっているようだ。
温かい。これは一体なんだろう。ふかふかしていて気持ちがいい。
頭もなにかふかふかとしていて、自分にかけられたこれも触り心地のよい。


先ほどの意味の分からない夢などすっかり忘れてしまった。


気づくと自分の足と頬、頭が白い何かで巻かれており、貼られていたりしている。
砂漠を歩いていた時より痛みがない。
それどころか服すら変えられているようだ。ラインが二つあるはずのストライプシャツのラインが一つになっている。それに色が紫と青から黄色と緑になっている。


ふかふかに包まれながら周りをよく見渡す。部屋の中のようだ。石でできている?
窓がない。棚にあるものは中身のない置くタイプの額縁。
足元をみれば、自分の足の高さより積まれたおもちゃらしきものの山。


もう少しだけこうしていようと思った時だった。


ぎぃ…と音が静かな部屋に響く。


身体が硬直し、後悔が募る。早くこんなところから抜け出すべきだった。
誰かだったとして、無事でいられるわけがない。
どうせ、またひどいことをされるに決まってる。
でもどうせ逃げたところで捕まってボコボコにされるに決まってる。


先走る気持ちと横たわった状態で覚悟を決めた。


大きな影が見える。震えと冷や汗が止まらない。


角が生えているように見える。大きい。あれがモンスターといわれるものだろうか。
表情が逆光で見えない。恐ろしい。


ゆっくりと音を立てずに近づいてくる。
僕は息をできるだけ殺している。


横たわる僕の横に来てしゃがんだ。
光で顔が少しだけ見える。僕は見たくなくてなるべく見ないように寝たふりを続ける。


しばらく顔を見つめている。
早くどこかへ行ってくれないかと願うほかなかった。


しばらくたっただろうか。それは小さくため息をついて僕の頭を撫でた。


「かわいそうに。すごくつらかったでしょう?こんなに怪我をしていたんだもの、分かるわ。今はゆっくりおやすみなさい」


そういうとそれは僕のおでこにキスをした。
その手はとても優しく、温かいもので初めての感覚だった。


それは床にカチャリとなにかを置いて扉を閉めて行ってしまった。


身体の緊張はほぐれていた。




その後は眠っていただろうか。頭がすっきりしていて体がしっかりと動いて痛みもない。
床に置かれたものを見る。


なにかケーキのようだ。まあ食べた事はないからよくわからないけど。
お皿の上に一切れ、ラップにかけられてフォーク、水の入ったコップがあった。


あの人が置いていったものだろう。


「いただきます」


一言そういってラップをはずす。
食べないのもどうかと思ったし、まずお腹がすいたのと喉がからからだ。
水を一気飲みしてケーキにフォークを刺して口に運ぶ。


……おいしい。なんの味だろう?初めて食べた。おいしい。おいしい。


床に落ちてしまったカスすら夢中になって残さず食べた。
結構大きかったから一切れでお腹がいっぱいになった。


あっ、全部食べてしまったからこのお皿とフォーク返さなきゃ。


あんなことがあったとはいえ、まだ警戒してしまう自分がいて嫌になる。


まだ緊張しているけれど、お皿の上にフォークとコップを重ねて持ち部屋をでる。
廊下はとても明るく優しい色合いをしていて、ためらう自分の背中を押してくれているようだ。


もしかしたら優しい人かもしれない。もしかしたらさっきみたいに頭を撫でてくれるかもしれない。
好奇心と不安を思いながら周りを見渡す。天井は自分の何倍も高く、ドアの横には茶色の大きな花が飾られている。触ってみるとそれはかさかさとしていてとても生を感じない。


「ハウディー!」


「!?」


小さな体がびくっと飛び上がる。
その衝撃でお皿の上に置いていたコップがずれて床へと落ちる。


パリンッ


破片が周辺に散らかった。
コップが割れたことにも驚いて声をかけたであろう方向へ警戒もせず振り向く。


そこには花がいた。さっき見ていた茶色の花じゃない。いた、というには言葉の意味が違う。だって花に命なんてないのだから、あった、が正解なはずなのにそう言ってしまう。
だって花瓶に入っていないし、石でできているであろうこの建物からつるを伸ばすなんてどんなに屈強だとしても難しいはず。


その花は6弁の金色の花びらに緑色のつるをうねうねと手足のように動かしていてとても可愛らしい姿をしていた。


花はプクククと小馬鹿にするように左側のつるで口を押えながら笑った。


「驚いた?あーごめんごめん。ずいぶん真剣だったみたいだからさ、驚かしたらどうなるかなって思ってさ」


いまだにプクククと笑っている。


馬鹿にされているようだが、怒りの表情がでない。


そのことに少し苛立ったのか花は笑うのをやめた。
まっすぐこちらを見つめている。


「あのさ、なんか顔にでないわけ?表情ないの?その顔むかつくんだけど」


「そんなこと言われても、これ生まれつきだしちゃんと驚いてる顔してると思うけど」


「はぁ?自分の顔、よく見たら?棒切れが三つ並んだ顔にしか見えないよ。ちゃんと起きてるの?」


最初に話す言葉がこんなことでいいのだろうか。
花が話すなんて今まで見た事がない。初めて見た。引っこ抜いたらどうなるんだろう。
生きていけるのかな、気になるなぁ抜いてみようかな。


金色の花に手を伸ばし、引っこ抜こうとしたが察しがよいのか花はつるで腕を捕まえて拘束した。


「…なにすんの。僕の話も聞かずに触ろうとしないでくれる?」


怒らせてしまったかな。花は構わず話し続ける。


「まあいいや、ようこそ新人さん。僕はフラウィー。お花のフラウィーさ。
どう?だいぶ戸惑っているだろう?それにだいぶ怖い思いもしてきたはずだ。こっちにきて。ここでの生き方を教えてあげる。ここはとても怖い場所だ。君も見ただろう、あのモンスターを。はやく、今の音でこっちにくるかもしれない」


フラウィーと名乗る花は腕を強引に引っ張り、自分の腕に巻き付こうと触手を絡ませている。
うねうねとしていて気持ち悪い。振りほどこうとするもそれは離れない。
いやだと振りほどこうとするが余計に絡み合ってくる。


それにフラウィーの後ろで白く光るなにかが見えているし、その表情は助けるといった顔じゃない。わずかな口角のゆがみを僕は見逃さなかった。


「なにやってるの、はやくこいよ!」


拘束から逃れようと廊下で小さな者同士が攻防を続けているとなにかを擦るような音が聞こえてきた。
こちらに向かってきているようだ。


フラウィーはチッと舌打ちして拘束を解いた。


「仕方ない、今はまだいいや。僕はいなくなるからね。でも忘れちゃだめだよ。この世界で信じられるのは自分だけさ。殺られる前に殺るんだよ。じゃあ忠告はしたからね」


そういうと石でできている床を突き破り、地中へ潜っていった。


そこは穴ができていてうっすらと茶色い砂が見えている。


「! あら、目が覚めたのね?怪我は痛む?」


大きなヤギの姿で紫のローブを着込んだ女性…だろうか。
床に落ちて割れたコップの破片を見つけて若干青ざめた表情をしている。
彼女は少し駆け足で来て同じ目線になるようにしゃがみ、傷の具合、顔色、いろんなものを触ったり見たりして確認していた。


「大丈夫?ガラスは刺さってない?」
心配してくれるこの声、この優しい手つきはあの時のものそのものだった。
最初はあんなに怖かったはずなのに今ではとても安心する。


「ううん、痛くないよ」


頬のほうで止まる彼女の手を握り返し、にっこりと笑ってみせる。


その反応が嬉しかったのかはにかんでいるようだ。
あの時のように優しく頭を撫でてくれている。


「そう。ならよかった…。危ないから向こうのリビングへ行ってきなさい。これは私が片付けるわ」


そういうと彼女は廊下の棚からほうきとちりとりを取り出して、微笑んだ。


「うん、わかった。お皿、キッチンに置いておくね」


「えぇ、キッチンはリビングの奥にあるわ」



とても優しい声色。それだけでとても心地よかった。


リビングには暖炉と近くにソファが置いてある。
暖炉はぱちぱちと音を立て、彼女用なのかとても大きく見えるソファには読みかけであろうしおりを挟んだ本が置いてあった。題名がカタツムリの調理法…?
長方形の木でできたテーブルにイスが三つ。二つは人間の大人が座るにも大きい椅子。
あと一つは僕が座ってちょうど良い大きさの椅子だ。


家具を通り抜けて、キッチンに着く。が、大柄な彼女が使っているシンクの高さと人間の子供である僕ではお皿を置くことすらままならなかった。


困ったが、どうしようもないのでリビングにある子供用の椅子を引きずってそれを土台に上り、シンクにお皿を置いた。
下からでは見えづらいが彼女の体毛だろうか?白い毛がいっぱい落ちていた。


…さすがにこの白い毛がいっぱい落ちているところに置くのもどうかと思うが仕方ないので置いておくことにした。


横を見ると大きなケーキがラップにかけられて置いてある。一切れだけない。
きっとお腹の中に入ったものだろう。


美味しかったなあ。どうやってつくるんだろう?
聞いたら教えてくれるかな?


子供用の椅子から降りて元の場所に戻そうとする。
ちょうど大柄の彼女が片付けを終えて戻ってきていた。
椅子を抱えた僕の姿を見て声をかけた。


「あら、ごめんなさい。あなたにはあのキッチンは高かったわね。気づかなくてごめんなさいね。手伝ってくれてありがとう」


椅子の片づけを手伝ってくれた。といっても彼女は片手で椅子を持ち上げるものだから実際僕は見ていることしかできなかったけれど。


片付けが終わると、彼女は僕をソファに座らせた。
さっきみたいに僕の目線になるようにしゃがんでくれている。
ソファの高さのせいで、少し見上げるようになってしまっている。


「本当に、痛くない?」


「うん。大丈夫だってば」


悲しそうな表情をしてほしくなくて笑って見せるけれど、ちゃんと笑えているだろうか?


「……まあいいわ。じゃあ、包帯はずすわね」


包帯と呼ばれた白い布をほどいていく。
その手つきはやはり優しい。
なんとなく気まずい雰囲気の中、先に口を開いたのは彼女だった。


「私の名前はトリエル、このルインズの管理者よ。あなたはこのHOMEのすぐ近くで倒れていたの。あなたの名前を教えて?」


包帯がどんどんほどけていって僕の素足が見えていく。
なんというかすこしくすぐったい。


「僕の名前は、フリスク。フリスクって言うんだ」


「そう…フリスク…いい名前ね」


「あの…あのケーキ美味しかった…です」


なぜか敬語になる。自分でもなぜ敬語になっているのかわからなかった。



「ふふっ…敬語じゃなくてもいいのよ。あれはバタースコッチシナモンパイっていうの。私の得意料理。本当はカタツムリパイにしようかと思ったのだけど、クセが強いからどうかなと思って我慢したの。でも今日の夜にでも作ることにするわ」


話しているうちに足と頭の包帯と取り終えたようだ。
頭と足が軽い。


「それとね、はい、これ。あなたがここに来た時に着ていた服よ。洗濯しておいたの」


トリエルから紫と青の二つのライン入りのストライプシャツをもらう。
間違いなくこれは自分がここに来るときに着ていたものだ。
服…?僕が来たときに着ていたもの…?


「! ポケットに入っていたものは!?」


突如、声を張り上げたフリスクにびっくりし、驚いた顔をしている。
それに気づいて深呼吸をする。落ち着け、落ち着いて。


「あれは僕のお守りなんだ。どこにあるかわかる…?」


トリエルは戸惑いの表情を隠しきれていないようだ。
まずい。違うんだ。そうじゃない。
冷や汗が伝っている。あれは本当にお守りなんだよ。


「そ…それなら部屋の棚の上に置いてあるわ」


部屋の棚…!あの時は横たわっていたから見えなかったのか!
服をもらい、急いで部屋へ戻る。
扉を勢いよく開けて勢いよく閉める。


リビングからさっき自分が眠っていた部屋までの距離は短いはずなのに動悸が襲う。
棚の上には確かに、お守りがあった。


すぐさま手に取って抱きしめる。


「よかったぁ……」


呼吸と鼓動は少しずつ収まっていった。



落ち着いて、部屋を出る。
服は自分が持っていたものに着替えた。
さっきの行動で驚かれてしまったけれど。
お守りはいつものポケットに入っている。


トリエルが心配そうにリビングからこちらを覗いていたようだ。


「…ごめんなさい。驚かせちゃって。服ありがとう」


頑張って笑顔を作ってみる。
彼女は少しほっとしたようだ。


そして僕に近づいて言った。


「私の方こそごめんなさいね。あれがフリスクの大事なものだとは知らなかったの」


「ううん、大丈夫。それよりもね、あのパイ…?の作り方を教えて欲しいんだ。あれ、すごく美味しかったから…」


トリエルは僕の頭を撫でる。今日だけで撫でられてたのは何度目だろう。


「わかったわ。でもまだ残りがあるから、今日ではなくて違う日にしましょう。しばらくは外も嵐みたいだからここを自分の家だと思って暮らしていいのよ」


「うん!」


トリエルがさきにリビングへ向かおうとするのを見ていた。
あんなに優しいモンスターなのに、どうしてフラウィーは信じられるのは自分だけだといったのだろう。


後ろからついてこないフリスクをみて、トリエルは言った。
とびきり自慢気な顔で。


「そんなにボーンっとしてたら骨になっちゃうわよ!」


……?


あっけにとられていたら彼女のほうが我慢できずに噴き出して笑っていた。


「あなたにはまだジョークは早かったかしらね」


まだ笑い続けているのをみるとこっちもつられて笑いだしてしまった。


しばらく笑って少し落ち着いたから今度は僕の方から話しかけた。
彼女を心から信頼しようと思ったから。


「ねぇ、ママって呼んでもいい?」


「え?今なんて…?あらあら…えっと…」


「ママ」


「それであなたは満足するの?私をママと呼ぶことで…?」


「うん」


「ふふっ…わかったわ。それならお好きなように呼んでくださいな!」



こうして、僕とママの二人での生活が始まった。


ママからはいろんなことを教えてもらった。
ママ以外のモンスターに会った時にどうすればいいか、パイの作り方、カタツムリの生態についてとか、ジョークの話とかとにかくいっぱい話をした。
理由はわからないけれどHOMEの外や地下に行ってはいけないということも教えてもらった。


でもわずか一週間過ごしただけで退屈してしまったんだ。


だから、ママがいない時に出てはいけないと言われていたHOMEの外へ内緒で飛び出してみたんだ。


家を出てすぐにモンスターがいた。
それはカエルの姿だが、僕より少し小さいくらいのカエル。
なにかを理解しているわけでもなく、ただ、こちらの様子を伺っていた。


*あなたはどうする?


→FIGHT 


→ACT



ruins 神に愛された者 end



あとがき


あー、初心者にはこれだけでもかなりの労力を使いました。
ruinsはそろそろ終わります。
これからどう選択するか閲覧者の力次第です。
と言いたいところですが、これは小説なのでゲームと違い、周回なんて回りくどいことをしなくても分岐を見ることが可能です。
小説の特権です。お楽しみください。
次は帽子のあの子とお待ちかねの骨とあの子を登場させたいですね。
その前にまた分岐ありますけどね。

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