sandtale-fromのブログ

UNDERTALE AUになります。砂漠化の世界、救うのは一輪の金色の花

パピルス戦 ACT


砂嵐が舞う。
その砂は、まるでフリスクとパピルスの戦いに彩りを添えているかのようだ。


ポケットに突っ込んだ手の中には、あのお守りがある。


…どうするべきか。


なぜか悩んでしまう自分がいることにフリスクは気づいていない。


思い出して。
目の前の彼がしてきてくれたことを。
疲れて倒れてしまった自分を家に連れてきて介抱してくれたこと、寒い夜の外から帰ってきた自分に温かいミルクをくれたこと。
こうして”稽古”に付き合ってくれること。


………………………いや、やめよう。


お守りは取り出さず、仁王立ちになる。


さて、稽古を始めよう。



*決意



「いくぞフリスク!」


パピルスが自分の持つ骨とフリスクを見比べて、またどこからか骨を取り出した。
パピルスの持っている骨よりも小さく、細長い。
その骨をフリスクの足元に投げた。骨は砂の上に落ちる。地面が柔らかいため音はなく、さらさらした砂に若干沈み込む。
パピルスがこちらに指を指して、自慢げに言い放つ。


「その骨を武器にして戦うんだぞ!俺様だけ武器を持って相手が何も持っていないのはフェアではないからな!サンズだけは別だけどね」


武器…は持っていないわけではないが、足元に落ちた骨を拾う。フリスクの手のひらに収まる細さで立てたら腰ほど高さだろうか。
意外と重量がある。持って振り回すがこれを武器にできるかわかりかねる。
これを軽々しく振り回すパピルスのすごさを身を持って知る。


「よし!武器は持ったな!いくぞフリスク!」


パピルスがフリスクに向かってくる。
そこから彼に敵意は感じられない。


「いいか、俺様が攻撃するからフリスクはその骨でガードするんだ」


ご丁寧に攻撃すると宣言し、防御法まで教えてくれる。
目の前にまで迫ったあと、フリスクに向かって骨を振り下ろす。


咄嗟に言われた通りに両手で骨を持ち、振り下ろされたパピルスの攻撃をガードする。


ガキィィィンと骨と骨がぶつかる音が砂嵐の中に響く。


ぶつかり合った振動はフリスクの体に伝わり、全身は震えた。
きっとパピルスは加減をしてくれているのだろう。だが、それでも振り下ろされた力は強く、腕も足もしびれている。


パピルスは追撃をせずに自分の武器をフリスクから離して心配そうな顔を向ける。
一度、戦闘態勢を解いているようだ。


「フリスク、痛くなかった……?」


この調子だと攻撃をガードするたびに心配されてしまうような気がする。
痺れる体に鞭を打って返答する。


「大丈夫だよパピルス。むしろもっと強くしたっていけるさ」


「……そっか。じゃあ、これならどうだッ!」


パピルスが手をこちらにかざす。


「!?」


急に心臓を手で掴まれるような感覚に襲われた。
そしてフリスクは気づいた。自分の足が砂の上から離れ、宙を浮いていたことを。


「どうだ!フリスク!これは俺様の使える魔法だッ!その名もブルーアタック!ニェーヘッヘ!かっこいいだろう?これはもう俺様に惚れざるを得ないだろう!」


自分の体がパピルスよりも高く宙に浮く。
足に地面がつかない感覚に多少の気持ち悪さがあるものの自分が空を飛んでいるという気持ちに囚われていた。
そう考えていたのもつかの間、パピルスが何か言っている。


「いいかフリスク!今から俺様はこの骨を投げて攻撃するから、その状態で躱してみるんだッ!」


ご丁寧に回避方法まで教えてくれる。
これで回避するにもどうしたらよいのか。体を動かそうとしてみるも動きにくいこの上ない。


動いてみることにした。微妙に動けて…………いるのか?


「今からお前はこの!俺様の魔法によって縦横無尽に操られるのだ!……あ、今から後ろに飛ばすから、着地したらジャンプしてね。俺様、骨投げるから」


かっこいいはずのセリフが回避方法を教えたために台無しだ。
意味の分からず攻撃されるよりかはマシかもしれない。


「わ……分かった…!」


ふわふわと浮いたままパピルスの指示に従う。


「よ……よし!じゃあ、いくぞ!」


謎の緊張感が襲う。さぁ、来てみろ…!


……………………。


…………………………………。


………………………………………………?


こない。


………………………こない。いつまでもこない。


パピルスはこちらに手をかざしたまま、まだ動かない。


「……パピルス?」


体が浮いたまま放置されたフリスクが声をかける。
彼はなにやら躊躇しているように見える。


「ち…違うぞ!決してやっちゃっていいのかなとか、怪我したら痛いだろうなとか考えているわけじゃないぞッ!俺様は誰かが傷つく姿を見たくないだけなのだ。でも!もし茶色の髪をした薄目の人間が傷ついたとしたら俺様のスペシャルスパゲッティをごちそうして
、泣いていればスペシャルなハグをプレゼントし、笑ってくれるまで側にいるのだ!」


ニェッヘッヘと笑ってはいるが、今言った茶色の髪の薄目の人間なんてこの砂漠内ではたった一人しかいない。
そう言ってくれるのは嬉しいのだが、体を下ろして欲しくなってきた。


「……本当にやっちゃうけどいいの…?…………フリスクは怖くないの……?」


腕を下ろしてパピルスが困ったような顔をしている。
もともとからか、あまり表向きに感情が顔に表れないため、フリスクの感情が読めないのだろう。


「僕は大丈夫だよ。それよりやるなら早くやってほしい……」


浮いているのは楽しいが、時間が過ぎていくと早く地面に足をつけたくなる。


「……わかったよ…じゃあ行くぞッ!」


パピルスが下した腕をもう一度フリスクに向けると彼の右目がほんの僅かな時間だけ橙色に変わった。


「!?」


フリスクの体がパピルスのいる方向とは逆に動いていく。
かなりのスピードで、この感覚は突き飛ばされる感覚に近く驚いて反応が遅れた。


パピルスがどこからかフリスクの持つ物よりもまた小さい骨を出した。


「いくぞ!ジャンプして躱せ!」


彼は大きく振りかぶって骨を投げつけた。


早さに驚いていて対応が取れない。
パピルスの魔法で体は飛ばされて砂の上に転がり落ちる。


すぐに立ち上がるも彼の投げた骨が真っすぐこちらに飛んできた。


ドゥン


顔を上げた瞬間に小さな骨が飛んできて、よく分からない音がフリスクのおでこから聞こえた。
当たった衝撃か、スローモーションのようにフリスクは後ろへ仰向きになって倒れた。


「あ」


パピルスがやってしまったという顔になっている。
すぐさま走ってフリスクに近づき横抱きに抱きかかえた。その手はか弱い子供のためにか、とても繊細で包み込むかのようだ。


「ご…ごめんなさい、強くするつもりはなかったんだけど…]


おでこを押さえながらパピルスの話を聞いている。
実は結構痛かった。
次にこの攻撃をされたら倒れないようにすぐに体制を直してジャンプしたほうがよいだろう。
とりあえず、パピルスの問いには答えないと…。


「大丈夫だよ、僕が不注意だっただけ。ごめんね、心配かけさせちゃって。パピルスの言う事もちゃんと守れなくて…。大丈夫。次も同じ攻撃でやってほしいんだ。お願いできる?」


手をおでこから離して、抱きかかえてもらっているパピルスの手からも離れようとする。
…だが、パピルスがそれを許さなかった。
虚勢を張るフリスクに心配しているパピルスが気づかないわけがなかった。
フリスクを見る目が変わらない。
子供の力では自分の倍あるモンスターの力に敵うわけもなく、抱きかかえられたままの状態だった。
パピルスは無言だった。
顔を見ても泣いてもいなければ怒ってもいない。
どうしたらいいのだろう。


砂嵐はまだ続いている。砂を舞う音だけが耳に届く。


パピルスがようやく口を開いた。


「……………そうやってすぐ大丈夫って言うのは良くないぞ。俺様、そうやって大丈夫大丈夫って言い続けて倒れちゃったモンスターを見てるんだからね……!」


「僕は本当に大丈夫だよ!だって早く強くなりたいんだ!」


その言葉に反応して、しばらくパピルスは黙ってしまった。


…………………。


そして、彼はこう言った。


「”大丈夫”って簡単に言っちゃうのは俺様、とてもツライぞ……」


そう言うと、何かを思い出したのか身長の高い骨のモンスターはフリスクの顔から目を逸らして下を向いてしまった。
身長が高いから下から覗き込むことができた。



彼は静かに泣いていた。



彼の瞳からポロポロと誰かを想う涙を流している。
それは彼が大きいからなのか、大粒の涙がフリスクのかけているゴーグルの上に落ちる。
涙はこの渇いた砂漠では湿ることなく、すぐに消えていく。


……どうしたらいいだろう。
泣かせるつもりは全くなかったのに、どうしてこうなったのだろう。
僕が悪いのかな?そんなつもりはなかったのに。


どれが最適な対応なのか分からずに、自分の持っていた骨を捨てて、パピルスの前で両手を振ってみる。……特に効果はなかった。


パピルスはまだ涙をポロポロと流している。
どうしたらよいか分からずに声をかけてみることにする。きっと自分にも非はあるはずだから。


「パピルス、ごめんね。そんなつもりじゃなかったんだ。だからお願い、泣かないで」


涙は彼の頬骨に流れていく。その水滴を手で拭う。
渇いた砂漠の中では、濡れた手ですらすぐさま渇いてしまう。


まだポロポロと涙は流れていく。
そのたびにフリスクは涙を拭くために何度も何度も手で拭う。


「ごめん…ごめんね…」


謝っていた。それは自分がフリスクに怪我をさせた罪悪感なのか、なにかを思い出してしまった悲しみなのか分からないが、ただ謝っていた。


パピルスが腕で自分の目をごしごしを擦りフリスクの目を見て言った。


「悪かったな!つい弱気になってしまった…フリスク、複雑な感情について語ってもよいか?」


「うん」


泣いていた目の前のモンスターにNOと言えるはずもなかった。
先ほどまで吹き付けていた砂嵐が徐々に治まっていく。
ゴーグルをつけなくても大丈夫なほどに。
フリスクはゴーグルを外してパピルスの目を逸らさずにはっきりを見つめる。


「俺様はロイヤルガードだ。アンダインから何もしなくていいって言われてもな。だから本当はフリスクを都まで連れて行かないといけないんだ…。でも連れて行ったらそのあとどうなるか俺様にはわからない。それに、キャラをあそこまで笑顔にさせられるのは、きっと俺様や兄弟でもなくてフリスクなんだ。でもアンダインの言う事を守らないとロイヤルガードを外されてしまうかもしれないし、ガッカリされてしまうかもしれない。俺様、一体どうしたらいいんだと思う…?友達がたくさんいる奴にはわからないだろうな…」


パピルスはなにか悩んでいるようだ。


僕は一体どんな言葉を返したほうがいいのだろう。
ダサいやつだと罵るか、それとも…。
そんなこと、”このフリスクなら”簡単な答えだろう。


「じゃあさ、僕と友達になってよ。友達になればそのロイヤルガードなんて役目はもう必要ないと思うんだ!」


なんて子供らしい安易な考えだろうか。
その提案をパピルスが受け入れるかはまた別の話になるのだが、フリスクの言葉を聞いて先ほどまで泣いていた顔がすぐさまパァァっと明るい表情に変わる。


「友達ッ!そうか!キャラだけじゃなくて俺様もフリスクを友達になればよかったのか!なんだ!そんな簡単なことなのか!ぜひ友達になりたいぞッ!」


「うん!これで僕たちは友達だよ!」


「!! わぁぁ!!! 俺様、友達ができちゃった!なんだ、そうか!友達になればいいのか!そうすればこんなに悩むことなかったのか!友達って一緒に稽古していれば自然とできるものなんだね!」


友達を連呼しては無邪気に喜んでフリスクを抱えたままの骨のモンスターの目の光が戻ったようで、フリスクを手から離し、足に地面をつけ立ち上がる。
フリスクも足が地面につく感覚をかみしめる。


やはり足がつく感覚はいいものだ。
砂嵐はすっかり治まっていた。


キラキラを目を輝かせる彼がなんの悪意もないことは明白で、これ以上戦う必要もないのかもしれない。
稽古は終わり、ということだ。


パピルスは何かを思い出したようにハッとするとフリスクこう言った。


「でも、アンダインに隠し通せるわけじゃないからな……。フリスクからアンダインを説得すれば悪いようにはされないのかな…そもそもなにをされるのか誰も教えてくれないし…」


パピルスが顎に手を当てて考えている。
フリスクが提案した。


「もしアンダインに会ったら話し合ってみるよ。パピルスをロイヤルガード?から外さないでほしいってことも、キャラとパピルスと友達になったことも全部話してみるよ」


「そうか?それならありがたいな!俺様、実は昨日夜中までキャラのマント作ってて寝てないんだよね…だから少し寝かせてもらってもいいかな…?」


そうだったのか。
骨だからクマなんてものもできていないから気づかなかった。


「そうだったんだね…わかった。ゆっくり寝ててよ。アンダインと話してみるから」


「あ、そうだ。じゃあアズゴア王とも会ってみるといいぞ!彼はとてもお人よしでもふもふしているんだ!きっと歓迎してくれるはずだぞ!じゃあ、俺様は朝だけどお布団に入って眠ってくるぞ!うさちゃんの夢をみるのだ!」


そういうとパピルスは大きくジャンプしてフリスクの上を飛んで自分の家の方向へ走って行ってしまった。


砂嵐がひどくてよく見えなかったが、パピルスが立ちはだかっていた方向の奥に進むと洞窟が見える。
洞窟へ向かって足を動かして進んでいく。中は暗いが壁に貼られた松明の炎がなんとか洞窟内を明るく照らしてくれているようだが、足元が見えづらく転んでしまいそうになる。


水筒も、パイもお守りもある。
準備は出来ている。


しばらく歩いていくと光が見えた。
その先にはスノーフルのような純粋な雪のように真っ白な砂とは違って少し濁り気のある茶色に近い白色の砂。ところどころに黒い粒のような砂もある。
緑色のチクチクした植物がたくさん砂の上から生えていた。




パピルス戦  ACT編         end


スランプ状態でした!!!(事後報告)
パピルス戦だけは本当に苦戦しました…。
頑張れたのは皆さんの応援からです…!気力をなんとか持ち直せました。
ファンアートまで下さる方もいて…本当にありがとうございます…!宝物にします!!
次からはウォーターフェルが舞台となります。
お寿司が食べたくなってきましたね。次は言い伝えについて語る事が多くなりそうです。

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