衝撃の事実って書いてる時点でそれに驚愕なんてしない
僕は真っ暗な部屋のなかにいた。まるで永い眠りから覚めたように瞼をあげる。
最初は何も分からなかった。
唯一理解できたことは、自分は死んでいたということ。
あぁ…そうか、僕は死んでしまったんだ。
どうして死んだ?
確か……何かを探していたんだ。
何を探していたんだっけ。
確かキラキラ光る何かを……。
そう考えていると遠くからかすかに音が聞こえる。これは…足音だろうか。そもそもここは一体どこなのだろう。迷子になったというには少し違う気がする。だって僕は暗いところが苦手だったからいつもキャラと一緒の布団で眠って……キャラ?
キャラって誰?
思い出せない。どうして?
足音は近づいてくる。音が大きくなる。その音と時計が秒針を刻む音。
カチ…カチ…カツ…カツ…
混ざり合って一つの音になる。
そして唐突に
足音が止んだ。
「君がアズリエル王子だね?」
もう時計の秒針が鳴く音しか聞こえない。
アズリエル? 誰のこと?
「君はもう自身のことすら思い出せないのか?」
思い出せないってなにが
「自身の体についても?」
………………………え?
体…?
そう言われるがまま、自身の体を見る。
自身の周囲に置かれた茶色の砂。これは植木鉢か?
他は冷たいコンクリートのようだった。
細い緑色がうねうねと動いている。これは一体?
触ってみようと手を伸ばすと視界に同じ細い緑色が茶色の砂漠の中から、まるで砂漠にある小さな木が懸命に生きようと芽を出すように緩やかにそれは生えてきた。
右に動かそうと思えば右に動き、左に動かそうと思えば左に動く。
なんとなくだけど分かってしまった。
僕はどうやら、もうヤギのモンスターではないのだと。
…ヤギ? そうだ。僕はモンスターだった。ヤギに似たモンスター。
名前はアズリエル。
そう。ぼくのなまえは、アズリエル。
……なぜだろう。不思議と悲しくない。
なにも感じない。
なんでだろう。
元の姿を失ったのに。
「…ようやく状況が理解できたみたいだね」
……悲しくないのならこの感情は一体何?
「君は金色の花を探しに行き、結果的に砂漠の暑さに耐えられず、疲労を溜め込みすぎた。私たちの命の源は誰かを想う心だ。焦燥感でそれを失って君は死んだのだろう」
目の前のモンスターは茫然としている僕を放って話を続ける。
「幸い、私たちが見つけて保護したのだが、君はもう塵になりかけていた。声をかけ続けてもなにも答えず、塵に変わっていったんだ。…君は私たちのことを覚えていないだろう。幼かったからね……そして、私は君を見捨てることができなかった」
テーブルの上にコップがある。
中はコーヒーが入っていたようだ。
誰かの飲みかけのものだったようで、その水面に自分の顔が映る。
顔に6枚の金色の花びらがついていた。
ずっと探していた金色の花。
僕は、その金色の花そのものになっていた。
「私はどんな姿になろうと君に生きててほしかったんだ。次期国王として…というのもあったかもしれない。だけど……上司でもあり、友人であるアズゴアに悲しい思いなどして欲しくなかった。たとえ禁忌を犯そうともね」
唇を噛んだ。いや、花に唇などないのかもしれない。
何も感じないと言ったけれど、なぜか怒りだけが僕を支配するみたいだ。
「モンスターのソウルを無機物へ注入することで姿かたちは変われど死の淵に立たされていたモンスターを生き返らせる研究…まさか成功するとは思わなかったけれどね。君が初めての成功事例というわけだ」
なんで僕は怒っているんだ?
「その原因かもしれないが、君のソウルはなくなってしまった。…このことについては本当に申し訳ないと思っている」
申し訳ないってなに? こんな惨めな姿になってしまったのに?
「…いや、死すべき者を決意の力で生き返らせようなどという考えそのものが、神への反逆に等しいのかもしれないな」
ねぇ、謝れよ。僕に対して。
「だが、結果として上出来だ。これで人間たちの世界へ赴いても何ら支障はない。死んだのなら決意を注入すればいいだけの話になったのだから」
話を聞けよ。
「戦争になろうが、もうこちら側に勝機が見えたも同然なのだから」
聞けって。
「そうだ。まだその君の体の元となっている金色の花のことだけどね、まだ研究中でね、迷い込んだ人間を埋葬した場所にしか咲かない花なんだ。不思議だよね。やっぱりこの花、私たちモンスターに神様がもたらしてくれた物だと思うんだが君はどう思う?」
…
「あぁ、名乗るのを忘れていた。私はfourthと名乗っている。四番目って意味さ。その名前の通り、私の他に3人いる。first…一番目は遺跡の古代文字を解明しているし、second…二番目は兵器の開発、Third…三番目は古代文字が何の意味を持つのか調べてる。そして私…fourthはこういったモンスターの身体について研究しているんだ」
四番目の研究者は長身で、花となった僕を高い位置から見下ろしていた。
薄暗い部屋に差し込む小さな光でさえ四番目はその身長で飲み込んでしまう。
逃げ場などないと言っているかのようで、それでいて誰よりも純粋な目をしている。
「…君は、私をマッドサイエンティストだと思うかい?」
この状況でさえ、研究に没頭する彼に少し興味を持った。
「そうだね、最高のマッドサイエンティストだと思うよ。死のうとしていたのに僕の意思関係なく生き返らせたうえに自分の考えを押し付けちゃってさ。頭おかしいんじゃないの? そうやって見下ろして有利になってると思ってんの? 確かにさぁ…生き返らせてくれたことには感謝するよ。でもね、君とは気が合わない気がするなぁ」
この姿になって最初に喋った。こんな状況にいながら饒舌に話すことができるとは、我ながら呆れる。
僕がようやく話すのを見て、彼は子供のように喜び、口角を上げて笑った。
「あはは、確かにそうかもしれないね。私と君では意見の対立が絶えないかもしれないね。そうかぁ…気が合わないかぁ…せっかく君とはいいコンビになれそうな気がしたんだが…仕方ないね」
「…これから僕をどうするつもり?」
こんな研究に巻き込まれたんだ。まだ自分はきっと研究対象だろう。煮るのか、それとも焼かれるのか、それは分からないけど…。
そう考えていたが、帰ってきた言葉は予想しないものだった。それは
「どうもしない」
「…は?」
思いがけない返答に遺憾の言葉を発してしまった。
「どうもしないってどういうことさ」
「その通りだよ。研究は成功した。これ以上君を留まらせるわけにもいかないだろう。君の親が心配している。早く帰ってあげるといい」
そう言うと四番は僕が入っている植木鉢を持ってエレベーターに乗る。
エレベーターが上がる鈍く、不気味な音。自分の体を重力の他に押しつぶすような感覚。
とてもとても、長く感じた。
そこは研究所だった。
さっきいたあの場所は地下だったようだ。
研究というくらいだ、研究所以外であるはずがないのだけど…。
外は暗い。夜のようだった。幾つもの星がきらめいている。
砂漠の夜はとても冷える。気温は一桁だろう。白く変わる吐息が僕の体を覆う。
四番はそっと僕を植木鉢から砂漠へと移した。とても優しい手つきで。
移し終えると空の植木鉢を持ってまた僕を見下ろした。
「これで君は自由だ。好きに生きるといい。すまないね、研究に巻き込んでしまって。しかも王子にこんなことまでしてしまって本当に申し訳ないと思っているよ」
「うるさいな、謝られる義理なんてない。家に帰ったらお前のこと言いつけてやるから」
「ははは…firstとsecondとThirdは関係ないから、処罰するなら私だけにしてもらえるとありがたいな……」
そんなセリフに背を向けて、僕は地中に潜る。
砂の中は外と比べずいぶん温かい。
早く、早く帰ろう。
家族が待ってるあの家に。
……。
…でも僕がこんな姿になったらみんなどんな反応をするのだろう?
憐れむ? それともお帰りって言ってくれる…?
分からない。
それでも行く場所はあそこしかないのだから。
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帰ってきて驚いた。
誰もいない。
この家には誰も。
捜してみたが部屋にもリビングにも誰もいない。
キッチンを捜して…そこにパパがいた。
台所に立って出来もしないバタースコッチシナモンパイを何度も作っては失敗している。
そのたびにパパは「やっぱり難しいなぁ…」と言いながら本になにかを書いている。
パイならママに作ってもらえばいいのに…。
ママは? キャラはどこに行ったの?
出かけたのかな。
「………」
「あの…」
僕は、赤の他人のフリをして、パパに話しかけた。
そうするとパパは体をビクリと跳ねた。驚いたようでその拍子に小麦粉と卵が混ざったパイの生地を落としてしまったようだ。
それだけではなく二次災害と言わんばかりに牛乳やバター、シナモンまでもが床に吸い込まれたかのように落ち、周囲に小麦粉が舞う。
「けほけほ…すまないね、やはり慣れないものはするものではないな…」
周囲に飛んでしまった小麦粉を咳き込みながら、パパは僕を見た。
体中小麦粉がつき、パパの特徴である黄色の髭すらも白く染まっている。
話しかけたのが花であることに気づいたのか、目線を合わせようとしゃがんでくれている。
たれ目気味で優しい瞳。いつものパパだ。変わっていない。
もしかすると僕である事を分かってくれるのかな…。
その期待は呆気なく裏切られる。
「おや、見ないモンスターだね」
……。
「僕のこと…分からないの…?」
「…すまないね。本当にわからないんだ。そうだ…今日は星空が見えて綺麗だ。こういう日はお茶にするといい。君もどうだね」
足元から世界が一気に崩れそうな、この感触。
お茶? お茶だって?
そんなことどうだっていいんだよ。僕だよ、アズリエルだよ。
「あぁ、すまない。さすがにこの格好でお茶に誘うのは良くなかったかな? 今着替えてこよう。少し待っていてくれ、茶菓子はないがとっておきの場所があるんだ」
待って、行かないで、パパ。
ここで離れたら、きっと…もう親子などではなく赤の他人のままだ。
「パパ!! 僕だよ!!! アズリエルだよ!!!」
背を向けたパパへ咄嗟に叫んでいた。
「アズ…?」
パパは振り返った。その顔は驚きで満ちていた。
気づいてくれた…? 僕…花になってしまったんだ…ごめんなさい。家出してごめんなさい。
パパにもママにもキャラにも迷惑をかけてしまってごめんなさい。
こんな姿になってしまってごめんなさい。
パパは僕に目線を合わせた後、その大きな腕で僕を抱きしめた。
「そうか、つらいことがあったんだね」
僕は______________
「でもアズリエルは花のモンスターではないんだ」
そっと自分をさすってくれるその大きな手。
「君はきっと誰かと勘違いをしているのかもしれない。だけど、いつかきっと自身の名前を思い出す時が来る。きっとね。今はツライ思いをしているのだろう? 私にはこんなことぐらいしかできないが、なにかあったなら力になろう」
何を言っているんだろう。確かに僕は花になってしまったけれど、僕は確かにアズリエルでパパの子どもで…
「アズリエルは確かに私の子の名前だ。いなくなってしまった私の息子…。本当はね、妻や、人間の娘もいたのだがみんな私に呆れてしまったのかいなくなってしまったんだ」
そう語りながらパパ…いや、モンスターの王は自分を撫でていた。
僕は…悲しくも嬉しくもなくなっていた。
____________________
それ以上のことはあまり思い出せない。
思い出したくもない。
今にも泣き出しそうな顔でパパと叫んで呼び止めたのに、向こうは自分を息子だと認識しなかったのだから、思い出したくもない。
それなのにお茶会を開くと準備を始めた自分の親を、これ以上見たくはなかったのかもしれない。
どうして僕のことが分からなかったのだろう。
姿が違うから? どうして?
ウォーターフェルのオアシスから流れてくる水。その水面から自分を覗いて見る。
あぁ、そうだよな。こんな姿じゃ僕はアズリエルなんかじゃなくてただの花のモンスターだ。
ふと、自分のソウルを見ようとした。
ソウルはモンスターの心臓とも呼べるもの。核のようなものだ。
それを取り出して見ることが出来るのが僕たちモンスターなのだから。
…
………
あれ
ない。
僕のソウルはどこ?
ない。
どこを探してもない。
ソウルが
ない。
………
…………
「はは……ははははは…………」
笑うしかなかった。
まさか金色の花を探しに外へ行き、倒れ、結局は自分自身が金色の花にならなければ生きられず、家族には見捨てられ、最後はソウルがないと来たか!!
自分はモンスターでもない!! 何者でもなかったんだ!!!
HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA
神様はなんて理不尽なんだ!
神なんてものがいるのなら殺してやる。こんな世界に、僕をこんな惨めな思いをさせたこんな神様なんか嬲って痛めつけて死んだ方がマシだと思わせるくらいにいたぶってやる。
*決意
*セーブがかんりょうしました
最終的な目標は神様を殺して僕自身が神になることだ。
僕だけの理想郷を作ってやるんだ。
そのためには…自分が持っていないソウルを集めるしかない。
人間のソウルが手っ取り早いだろう。
パパ…アズゴアがそう言っていたのを思い出す。
人間のソウルはとても強力だと。
真っ先に思いつくのはキャラだ。
この砂漠において人間は彼女しかいない。
………。
いや、焦る必要はないだろう。
ソウルがなくともできることはある。
そうだ、全員殺そう。
アズゴアは僕のことを突き放した。
ママもきっとそうだ。そうでなければ困る。
キャラ…は放っておけばいい。
モンスターたちのソウルを集めればきっと…。
_____________________
僕は最後の回廊にいた。
身体が動かない。
どうやら倒れているようだった。
僕の体は突如として重力に叩きつけられる。
「あぁっ…!!! グゥッ……」
いや、これは…足? 僕は誰かに踏まれているのか。
踏まれているだけならまだいい。これは意図的に踏み付けられているのか。
まるで逃がさないとでもいうような、ぐりぐりと僕を踏みつぶしているようなそんな踏みつけ方…。
僕は踏みつけているこいつの正体を知っている。
「…もう終わりか? 神になるとほざく割にたいしたことないんだな」
青いフードに緑色の長いマフラーをしたモンスター
現ロイヤルガード隊長にして物理学者
サンズだった
左目が藍色に光ったまま僕を睨んでいる。
「俺を相手にするならそれなりの力を身に着けてこい」
「いい加減僕を踏みつけるのやめろよこのニヤニヤしたゴミ袋が…!! 僕にはResetの力があるんだ! それにコンテニューの力もある!! そしてLOVEも…!! お前の攻撃パターンさえ分かればいつだって一撃でお前を殺すことができるんだからな!」
「へぇ、そりゃいいな。教えてくれよその攻略方法。Resetの力を持つ野郎がどういう感性の持ち主なのか…俺も知るいい機会になった。なら早く殺してもう一度地獄を見るか? 死んだら俺と戦う前に戻れるんだろう?」
「地獄なんて見てたまるか。お前を殺す。それだけで僕の存在は正当化されるんだ!!」
「…正当化ね…。…このフィリア砂漠に住むほぼ全てのモンスターの衣類を一匹で編み、Resetを知る数少ないモンスターであり、誰よりも臆病だった研究員のアルフィス、俺の可愛い部下であり、誰よりも真っすぐで嘘をつくことを知らないアンダイン、みんなのアイドルであり、誰よりもみんなに気を使って明るい未来を作ろうとしたメタトン、引きこもりがちだったが城への門を管理し誰よりもおしゃれに敏感だったマフェット。…そして誰に対しても疑う事を知らず、太陽よりも明るい道を示した俺の大事な兄弟パピルス」
「…」
サンズがなにかを語り始めた。
僕にとってはもう全部どうでもいいことだ。
「なぁ、教えてくれよ。お前、一体どんな気持ちでみんなを殺したんだ? みんな泣いてたか? それとも笑って許そうとしたところを殺したのか?」
この隙にコイツを殺すために思考回路を巡らせる。
一瞬の隙、それさえ分かればいい。
この手は分かってる。しばらくは冷戦になるから戦闘に入る本当に少し前を狙ってアイツのソウルに一発打ち込めばいい。
それだけで勝てる。
「…なぜ答えない?」
「答える意味なんてないだろ。殺害を繰り返すのに理由なんている?」
「それもそうだったな。でも今の発言で全部分かった。俺たちはお前のただのしょうもない八つ当たりに巻き込まれたってことだ」
今ならコイツのソウルを狙える。
そう思って動こうとした瞬間だった。
何を思ったのか、サンズは僕を地面から引きちぎった。
ぶちぶちと蔓が裂ける音がする。
ソウルがないから痛いのかも分からない。
完全に地面と離れた僕を掴んだままコイツは僕の顔を見た。
藍色に光る左目が僕を覗き込んでいる。
コイツは笑ったままだった。
まるで蛇に睨まれた蛙のようだった。
サンズが自分を掴んでいない手で僕の頭を掴む。
メリメリとその手から力が加えられているのが分かる。
メリ
メリ
メリ
ミシ
そんな音が自分から聞こえてくる。
そして最後に
グシャ
と何かが潰れた音がした。
それから何度もサンズと戦った。
なのに一度もダメージを与えることが出来なかった。
アイツはとても素早く、当てたと思っても大きな骨の竜が現れてアイツを庇う。
短期戦では敵わない。最初から全力で行かなければ勝てなかった。
色んなモンスターを倒してきているのになぜこんなにも苦戦させられているのだろう。
なぜアイツに勝てない。
なぜ
なんで
「経験の差だろ」
まるで心を読んだかのようだ。
また勝てなかった。
突っ伏している僕にアイツは言った。
「お前さん、虐殺者の中に放り込まれたことないだろ。周りは全員敵で、誰彼構わず自分の命を狙ってくる、そんなどこにでもよくある世界に居た事あるか? ないだろ。いくら経験値というLOVEを集めたところで戦闘の経験の差は埋まらない。お前のLOVEはただの数値化されたただの飾り。それがゲームならその経験値は強いだろう」
「だがここはゲームじゃない」
「”文字の世界の物語”なんだよ」
「俺はLOVEなしで戦ってお前に勝っている。これはただの戦闘センスだ。経験値なんて概念、この世界じゃ通用しない。ここはゲームじゃないんだからな。この世界において最も重要なのはLOVEじゃない。そのモンスターの戦闘スタイルやこの世界における表現力だ。俺は強くなんかないんだぜ? …いいこと教えてやったし、もう用もないだろ。いい加減諦めてくんねぇかな」
「誰が…誰が諦めるもんか…お前さえ殺せば全部終わるんだ!! アズゴアは最後まで僕を警戒しない!! お前さえいなくなれば終わるんだ!!!」
サンズはまたため息を吐いた。
「…一体、この小説はいつ終わるんだろうな…。さっさと終わってくれれば俺も自由なのに、まだ解放してくれないらしい」
「何を意味の分からないことを!!」
「あぁ、俺の独り言さ」
会話をしていて気づかなかったのか、誰かがサンズの後ろから歩いてくる。
今まで二匹のモンスターの会話だった回廊に足音が響いている。
サンズがその足音の正体に気づいてハッとする。
その一瞬を見逃すわけにはいかないかった。
あらかじめ作っておいた弾をサンズへ向けて打ち込む!!
「伏せて!!!」
その声に反応してサンズが体を動かした。
驚いて声の主の方へ視線を向ける。
そこにいたのは、茶色のマントを身に纏い、一本の黄色の横縞の入った淡い水色のワンピースを着て、その手にナイフを持った少女。
あぁ……やっぱりだ。
キャラだ。
彼女は真っすぐに、立ち向かう決意を僕に向けた。
詳細は分からない。
ただ、彼女のせいで、僕はこの時間軸を捨てることになった。
諦めざるを得なかった。
彼女が僕の虐殺を、止めた。
それだけは紛れもない事実だったんだ。
___________________
衝撃の事実って書いてる時点でそれに驚愕なんかしない end
久々の更新ですね。
大幅に更新が遅れ、申し訳ありません。
Pルートはあと二回で終えようと思っています。
本来はSANDTALEが生まれた日にこの物語を終えようと思っていましたが、それを許してはくれないことばかりが起きてしまっています。
残念ですがこの話は【ゲームではなく、小説です】
ゲームは一度手にすれば、エンディングまで行くことができますが、
この小説は随時更新のため、時間を要します。
そのことには大変申し訳なく思っています。
現在もこの小説の更新を待っていてくださる方には頭が上がりません。
ありがとうございます。
最終回まで、もう少しお付き合いをもらえればと思います。