sandtale-fromのブログ

UNDERTALE AUになります。砂漠化の世界、救うのは一輪の金色の花

アンダイン ACT



砂が鳴いている。
その音は二つの影から聞こえている。


走り続ける小さな子どもとそれを追う魚人のモンスター。


それを見続けるのは青く澄んだ空にたった一つだけ浮かぶ太陽と歌い続ける砂のみ。


子どもの足では戦闘慣れしているであろうモンスターから逃げ続けることはできない。


戦うしか道はないのだろうか。


子どもは逃げ続ける足を止め、モンスターに向き直った。
その様子を見てか、追っていたモンスターも足を止め、右手に青色に光る槍を形成する。


その顔はもう逃がさないとでも言いたげに口角をにやりと上げている。


「よう…もう観念したか?」


はぁはぁと息を切らす子ども。子どももまた、にやりと笑った。
それを見て、モンスターは笑っていた顔から驚いた顔に変わる。


「………なぜ笑う」


「…さぁ……アンダインがそうやって笑うからじゃない?」


実際のところ、フリスクが笑っている理由はこの強敵から逃げる隙を伺い、かつどうやってこの状況から脱出できるか絶望して出た渇いた笑いだろう。


「そんなことどうだっていい。アズゴアのためにもお前はここで死んでもらう。もうお前を助ける者はいない。ここで終わりだ!!」


「本当に、僕を殺せるのかな…?」


息を整えながら落ち着いて声を出す。


「………どういう意味だ」


アンダインが安い挑発に弱いのは”知っている”
だから怒らせる。


「だから、今までこうして逃げ回っていたけれど流砂に巻き込まれたあの時にトドメを刺すことだってできたはずだよ。どうしてそうしなかったの?」


「………」


アンダインが眉間にしわを寄せている。


「それに信仰の遺跡から出た後も話をせずにいれば背中を狙って殺すことだってできた。そうしないのはちゃんと理由があるんでしょ?」


そう。流砂に足を取られ、動けなくなったところを狙えば確実だった。
信仰の遺跡から出た後も声を出さずにいればフリスクの背後に向かって槍を貫くことができたはず。戦闘能力の低い人間ならば簡単に終わるはずなのだ。


アンダインが歯を食いしばってフリスクを睨みつける。
どうやら図星を付かれたようだ。
人差し指をフリスクに向けて大声で言った。


「うるせぇな!!! あたしは子どもの背後を狙うような卑怯な奴にはならないって決めてんだ!! 戦うなら正々堂々と戦え!!」


アンダインが自分の持っていた槍を両手で押さえたと思えば、槍に向かって膝蹴りをかます。


バキィ!!っという音とともに槍が簡単に真っ二つに折れた。


いきなりの意味不明な行動にぎょっとする。


アンダインは半分に折れた槍の矛先の部分をフリスクに向かって投げて指を指す。


「それを拾って構えろ!!!」


そういう彼女からは嫌悪のようなイラついているようなそんな表情が見てとれる。
……早く拾った方がよさそうだ。


槍を拾う。
アンダインが半分に折ったおかげか、長さもちょうどよく、子どものフリスクでも持ちやすい。


アンダインが槍を形成する。
いつもと違うのは青色の槍の他に黄色の槍が一つ混ざっていることか。


「その槍で、これを防いでみろ!!」


振り上げた腕をフリスクに勢いよく向けると一斉に槍が飛んでくる。


フリスクが槍を構える。
最初に追われていたときよりも槍の速さが遅い気がする。


これならたぶん避けることができる、そう思っていた。


「……!!」


足が動かない。


疑問よりも、先に向かってくる槍も片付けないといけない。


真正面、右、後ろ、左の順から青い槍。
真正面の方向から黄色の槍。だが明らかにこの槍は矛先がこちらに向いていない。


考えろ。


先に青い槍を防いでいかないと。


正面、右、後ろ、左。アンダインから受け取った槍は構えると壁のような障壁を作り出す。これも一種の魔法か。
その反動か、甲高くも聞いていて不快感のない音がキンキンと鳴り響く。


次に黄色の槍。真正面からきているのに矛先が明らかに逆方向。


かと思えば、
槍は急に角度を変え、フリスクの背後を取っていく。


「……!!!」


驚いて咄嗟に振り向き、槍を構える。


キンっとアンダインの槍をはじく。


反動か自分の体が後ろに仰け反って尻もちをつく。


背後はとらないんじゃなかったのか。


「…………」


驚いたままアンダインに顔を向ける。
アンダインはニヤリと口端を上げて笑っていた。


「ほう…? あれを防ぐとはよく見てるじゃないか。だが…今度はどうかな?」


腕を横に薙ぎ払うと一気に槍が形成される。
その槍は全て青色。だが、その槍は先ほどの槍とは違い、長く、フリスクに真っすぐと向かってくる。


冗談じゃない! 相手にしていられるほど僕は強くない!
ここまで来るのに”何回やられたか”考えたくもない!!
もうコンテニューはごめんだ! このままではキャラとの約束も守れないじゃないか!


逃げよう! 正面から向かって勝てる相手じゃない!
もし倒すとなれば……もっと事前に彼女の体力を減らす必要が……今はそんなことどうだっていい!
逃げ延びよう!




*決意




【うぇるかむ! ホットランド!】


看板が見える。
尻もちのついていた体をすぐに起こし、走り出した。
今度は足が動く!
槍はさきほどフリスクのいた場所に突き刺さる。


相変わらず砂は鳴く。それは逃げるフリスクを応援しているようにも聞こえる。


背中を向け走り出したフリスクを見てアンダインは驚いた顔をしてすぐさま追いかける。


「てめぇ!! 潔く戦うんじゃなかったのか!! この腰抜け!!」


この罵倒も何度聞いたことか…。


後ろを振り向かなくとも般若の顔をしていることくらい分かり切っている。


日差しが強くなる。
昼が近づいてきているのかもしれない。
この猛暑で逃げ回ることこそが命取りになりそうだ。
早く、早くこの状況の打開策を見つけなければならない。
今のところあるのはホットランドに向かって逃げ続ける。これしかない。


走っていく間に砂に変化が表れていた。


砂はオアシスから離れて行っているせいか、どんどん音がなくなっていく。
それどころか、砂の色が茶色から赤い色に変わっていく。
足首まであった砂の量も減っていき、走りやすくなっていた。


先に水を補給しておいてよかった。


一方、アンダインは焦っていた。


暑さもあり、今の今までフリスクを追いかけ、間に割って入ってきた骨と対峙し、昼が近いこの日差しの中、水分補給すらなく走り続けていた。


息は切れ、疲労が表情に表れていた。


茜色のペンダントが輝いている。彼女からもらったペンダント。
アンダインを守る鎧。宝物。


人間の向かう先には彼女がいる。
護らなくては。今はその思考しかない。


だが、体は動くことを拒否しているかのようだ。言う事を聞かない。



フリスクは、アンダインの体力が底を尽きていることに気が付いていた。
サンズが体力を減らしていたおかげもあるだろう。


追いかける側と逃げる側の距離が離れているようだ。


砂の形状が変わり、子どもでも走りやすいことも理由としてあるだろう。


「………?」


後ろにアンダインの気配がない。
追いかけてきていないことを察して振り返る。



アンダインがうつ伏せに倒れていた。



「…!?」


この暑さのせいだろう。もともと魚人であるモンスターが短時間とは言え、戦い続けていればこの暑さでやられることは目に見えていたことだ。



「うぅ……」



苦しそうだ。


………このまま放置していれば、アンダインがどうなるか…。
きっと子どもでも分かることだろう。


うぅーーーーーーん…………。


助けるべき? 襲ってきた相手を…? でもこのままだっとどうなるか…。




………見殺しにする?




………………。



アンダインに近づく。
うつ伏せになって息を切らしているモンスターをおんぶをするように抱えた。


人間、しかも子どもが自分の倍はあるだろう大きさのモンスターを抱えて、砂漠へ照りつける太陽の下、歩き始めた。


その姿を見ているのは太陽と砂のみ。


ただただ、人間の子どもが魚人のモンスターを抱えて歩く姿を静観していた。


この先に、大きな建物がある。
明らかに人工的に作られた建物。石が積まれた大きな建物。それは三角の形をしている。


その中なら、なんとかなるかもしれない。


アンダインの体が熱を発しているようだ。マント越しからでも伝わってくる。
早く涼しい場所に連れて行かなければ危ないだろう。


それに重い。子どもが脱力したモンスターを抱えて砂漠の中を進んでいるのだ。息を切らしている中、あの建物を目指して進む。


一方、担がれているアンダインは、不意打ちができるにも関わらず、ただ人間がしている行いに身を委ねたままその瞳をゆっくりと閉じていった。


三角状の建物の前に着く。目の前に扉が付いているようだ。


だが、ドアノブがない。
押しても開かず、引っ張ろうにも掴むところがない。


…ここまできたのに……


追われ、そしてモンスターを抱えてここまで来たというのに、開かなければ万事休すだ。
そして暑さで思考をやられかけている。正常な思考を持てない。


「くそっ……!!!」


思い切りドアを叩く。
ガンッと大きな音立てるも自分の手が痛くなっただけだった。


「ッ……………」


「……だ……誰かいるの…?」


自分の手をさすっていると、ドア越しから誰かの声が聞こえてきた。
女性の声だろうか。


ドアが機械音ととも横に開いていく。


そこには白衣と腰まで隠れるマントを身に着けた肌の黄色いモンスターがそこに立っていた。


「あ……あなた…もしかして…人間…?  !!  アンダイン…!?」


フリスクの顔に驚いたのもつかの間、倒れているアンダインを見て血相を変えた。
状況を察したのだろう。フリスクと目を見合わせた。


「…早く!! アンダインを中へ!」


2人でアンダインを室内へ運ぶ。
建物の中はとても涼しい。日差しがないから、という他にも理由がありそうだ。
中には機械がたくさん並んでいる。その恩恵もあるかもしれない。


アンダインをソファの上に横たわらせる。
白衣のモンスターは心配そうにしばらく見つめた後、フリスクに向き合った。


「ペンダントの魔力が切れてきたみたいだから、少し横になって寝れば元気を取り戻してくれるわ。また無茶をしたみたいね。全く…何が”大丈夫”よ。全然大丈夫じゃないでしょう……大丈夫だなんて軽々しく言わないでほしいわ…。…私じゃ力不足なのは分かってはいるんだけどね…」


そういうと下を向いて悲しそうな顔をした。
だが、フリスクの前だという事に気づいて少し慌てた後、コホンと咳をして背筋を伸ばし自己紹介を始めた。


「ありがとう。あなたがアンダインを助けてくれたのね。私の名前は王国研究者アルフィス。アルフィーとも呼ばれているの。私の友達を助けてくれてありがとう」


深々と頭を下げた後、ぎこちなく笑った。





アンダイン    ACT     end


アンダインACT終了です。
パピルス戦で誰かが大丈夫と言い続けて倒れたモンスターがいる。と言っていましたね。
さて、誰のことなのでしょうか。
ここまで言えばわかりますよねさすがに。


Nルート終盤に差し掛かりました。
そして、SANDTALEが産声をあげたのは2月8日。生まれて半年が経とうとしています。


ここまで続けられるのは皆さまが楽しみにして下さっていることがハッキリと分かっているからです。本当に感謝しかありません。ありがとうございます…。


次からホットランドです。月一の更新ができるよう頑張りたいです。

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