エンディングまでもう少し
どこかに黄金色の砂漠があるという。
その砂漠の砂は風もないなかを独りでに動き、誰かを導くという。
金色の花よりも伝説とされる話。
この砂漠自体、金色の砂漠は存在しない。
ルインズは岩だらけで砂はないし、スノーフルの砂は白いし、ウォーターフェルの砂漠は茶色だし、ホットランドの砂は赤い。
願いを叶える金色の花
誰かを導く黄金色の砂
共通点がないとは言い切れなかった。
だから僕は探している。
何度も何度も同じ日を繰り返し、巻き戻しながら。
金色の花と、黄金の砂漠を。
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私にはソウルが見えた。
モンスターのソウルは白い。
だけど私には色がついているように見えた。
母は包み込むような優しい緑色
サンズは色のはっきりした黄色
パピルスは心から澄み渡るような青色
アンダインは燃えるような赤色
アルフィスは静かに泣いているような水色
メタトンはみんなを励ます橙色
父は揺らぐことのない紫色
とても綺麗な色をしていた。
…アズリエルは何色でもなかった。色が混ざっていた。
そう、少しだけ現れては消えるような…虹色だった。
この間来たばかりの人間のソウルも見てみた。
彼のソウルは透明だった。
何の色もついてなかった。
だけど、少しだけヒビが入っているようにも見えた。
ほんの小さな綻びで壊れて崩れてしまいそうな、そんな気さえした。
初めて彼と会った時、彼は私の顔を見るや否やとても悲しそうな顔をした。
パピルスやサンズは分からなかったようだったけれど、私にはそう見えた。彼のソウルはただ悲しそうにきらめいていたから。
どうしてそんなに悲しそうな顔をするのだろう?
今までどんな苦しい思いをしてきたのだろう?
誰かのソウルの色は分かっても人の心なんて読めない。
私は自分の弟の面影を彼に重ねながら、彼…フリスクの頭を撫でた。
大丈夫、大丈夫。もう怖くない。
…頭を撫でた後、自分のしたことに恥ずかしくなって結局パピルスの後ろに隠れてしまうけれど、私はいつでも君の味方でいるよ。
あのね、私にはね、弟がいてね。アズリエルっていうんだ。
そんな話をしながら私は昔住んでた家にいる。
つらい思い出が多い場所でありながら、とても大切な場所。
君はもう知ってるって顔して私の話を聞いている。それに気づかないふりをして私は話を続ける。
…私にだって君に話してないことがあるんだよ。
君は、誰も傷つけないように戦ってきたことを私は知ってる。
傷つけないように頑張って頑張って、自分が大けがして死んでしまったことも知ってる。
どうして分かるのか、それは私にも分からない。
もしかすると同じ人間だからなのかな。
君が傷つけば私も傷つき、君が死ぬと私はその痛みを共有する
外傷はないのに、君が怪我をした体の一部が同じように痛い
でもこのことは内緒にしようと思う
君からの痛みは私には感じられるけれど、私の痛みは君には届かないから
でもよかったと思ってる
ずっと前から右腕が棘でも刺さるように痛いけれどこの痛みを君が感じる必要はないのだから
エンディングまでもう少しだ
長い旅もようやく終わる
君にとってはとてもとても気の遠くなるような長い旅が
…そろそろ別れの時なのかもしれない
君はきっとこの砂漠から出て行ってしまう
私たちを残して、人間の世界に戻ってしまう。
「一緒に行こう」って言われるだろうけど行かないよ。
パピルスが悲しんでしまうし、サンズはだらしないから私が怒ってあげないといけないの。
でももし
金色の花を見つけることができたら
私は願おうと思う。
フリスクやモンスター、人間みんなが手を取り合って幸せに暮らす未来を。
end