フロギー ACT
何かを理解しているわけではない。
何を望んでいるのか何を考えているのか、その表情はフリスクですらわかりかねる。
トリエル、フラウィー以外のモンスターを見たのは初めてだった。
調べようと思った。どんな構造をしていてどう動いているのかを。
よく見ると上はカエルの顔をしているのに体はまるでトンネルのような空洞ができており、顔のようなものが入っているように思える。
観察をし終えた後だった。
「!? 痛い!」
突如として背中に痛みが走った。びっくりしたこともあり、頭が混乱する。
振り返るとそこには豆ほどの羽の生えた小さなものが一時的に止まってはこちらへ向かってくる。
あれに当たったのか、小さいのにずいぶんと攻撃的だ。
あのカエルのモンスターからか。
まだ向かってくる。あと四つ同じものがあるだろうか。
動きは単調だ。
円を描くように動き回る。これなら当たらない。
なぜ攻撃してくるのだろう。
もう少し観察してみるべきか。
…どうやら、小さく怯えているようだ。体がほんの僅かだが震えているように見える。
どうしてだろう?僕が見慣れないからだろうか?
カエルはまた攻撃をしてくる。
さっきと同じ方法で躱し続けながら考える。
もしかして怖いと思ったものを攻撃するといったことでしか解決できないのか?
ただ単に僕が怖いだけなのか、それともほかのなにかか?
自分もここに来たばかりは不安で怖くて仕方なかったから、どうすれば安心してくれるかな?僕の時はどうだったっけ。
そうだ、僕はママに心配されて頭を撫でられてパイの作り方教えてもらって…。
「痛っ…」
そんなことを考えていたらまた当たってしまった。
痛い。こんな時はママが手当てをしてくれたのに。
結構ママはジョークが好きみたいだし、それをお世辞でも喜んだらとても嬉しそうに…。
お世辞…?
何かをひらめいたように、カエルに近づいた。
もう弾は飛んでいない。
とても友好に接するように僕は話しかけた。
「君はカエルなの?とても可愛いね!」
お世辞というには単純すぎる言葉を選んでしまった。
……………。
……沈黙が続く。失敗したかな…?
「ゲコッ!」
沈黙を破ったのはカエルのほうだった。どうやら言葉の理解こそはできてはいないものの嬉しい事を言われたことはわかっているようだ。
なんだか嬉しそうにも見える。
体のほうにある顔の影がさきほどより照れているように見えるからだ。
「ゲコゲコ!」
何かを伝えようとしているようだ。
……んと、なになに。
「トリエル…こわい……家…出てきた……僕…仲間……。」
「えっと、つまり、トリエルが怖くて、その家から出てきた僕はその仲間だと思って攻撃してきたの?」
ゲコッと返事をするカエル。言葉は理解できているのだろうか?
「大丈夫だよ、僕はママ…トリエルと家族になったんだ。すごく優しくて怖くないよ。それでも怖いならママに話してみるから…」
ゲコッ
また返事をして、今度はまた何かを伝えようとしている。
「f...r........o...g....g...i......t.....フロギット?」
きっと彼の名前だろう。
まだ伝えたいことがあるようだ。
「……プレゼント?………持ってくる?」
またゲコッと一鳴きするとどこかへ行ってしまった。
なんだかよくはわからないが、友達になれたということかな?
いてて…今頃になって痛みがじわじわと出てきた。
とりあえずママが返ってくるかもしれないし家に帰って、傷の手当てをしよう。
確かばんそうこうがあったはず。…気持ち悪いデザインのやつ。
トリエルに傷がばれたら過保護な彼女のことだ。面倒なことになりそうだ。
内緒にしておこう。
だが、後にお風呂に入ることでばれてしまい、理由は言わなかったもののしばらくお説教を食らうことになることは言うまでもない。
フロギー ACT end
ACT編です。
フロギットと名乗っていますが、愛称という面で題名はフロギーにさせていただきました。
お気づきかもしれませんが、このフリスク、かなりの洞察力と観察力を兼ね備えています。
しかも気持ちを汲み取るのがとても上手いです。
それはSANDTALEのフリスクだけでなく他の世界線のフリスクにも言えることだと思います。