sandtale-fromのブログ

UNDERTALE AUになります。砂漠化の世界、救うのは一輪の金色の花

snowdin 名前の由来


パピルスとキャラは自分の部屋を掃除していた。
といってもキャラはパピルスの部屋で寝ているため、同じ部屋だ。


パピルスは自分によく似たフィギュアのほこりを布で一つ一つ丁寧に取り、キャラはしわしわになったシーツを伸ばしながら綺麗に直している。その表情はどこか嬉しそうだ。
そんな顔を見てかパピルスも嬉しそうに笑っていた。


「キャラ、そろそろフリスクが帰ってくるかもしれないからパジャマに着替えてすぐ寝られるようにするぞッ!」


「イエッサー!隊長!」


軍人のように体をシャキッと伸ばし手を横水平にしておでこ近くに当てる。
たわいない冗談をしながら砂漠にやってきた一人の子供のために部屋へもてなしの準備を進めていた。


「でも、サンズが一緒にGrillby'sに行ってくれてよかったかもしれないな!」


「え?どうして?」


「こうしてフリスクを部屋に歓迎する準備もできたし、キャラだって初めて会うやつとは目を見て話ができないだろう?それに…スパゲティをまた作るのも骨が折れる!」


「骨……」


彼は骨なのにそれを言うと、反応しないわけがない。


「あっ……ち…違うぞ!今のはノーカンというやつだ!俺様はサンズと違ってジョークなんて嫌いなのッ!」


「でも、笑ってるよ?」


パピルスの口角は骨だが確かに上に上がっている。


「ぐッ……悔しいけど…ジョークは嫌いなの!キャラは早く着替えなさい!お兄ちゃん命令だからねッ!」


そう言い残して部屋を出て行った。そんな様子をにこにこと微笑みながら見ていた。
パピルスの部屋にはキャラ一人が残された。


さてと、着替え着替えっと。


窓横のクローゼットルームへ自分のパジャマを取りに行く。
ちらりとテーブルの上を見る。そこにはたくさんのフィギュアに交じって、一つだけ、異質な物があった。
ラップに包まれ、一人分に切られた大きいケーキ。


あれ、やっぱりそうだよね。


まぎれもなく、あのバタースコッチシナモンパイだった。


…………フリスク……ママに会ったのかな……。もしそうなら、私も……。聞いてみようかな…?いや、止めておこうかな……。


複雑な心境はきっと彼女にしか理解できない。






寒い。寒い寒い寒い寒い寒い!!
なんで砂漠なのに雪が降ってるの!?なんでこんなに寒いの!?
ありえない!ありえないよ!!


夜遅く、一人の子供が駆け足で砂の上を走る。
空は、今走っている砂と同じ真っ白な雪が降っていた。
上は雲と雪で、下は真っ白な砂でどこもかしこも白だらけ。
フラウィーと話していたせいだろう。体が冷えてしまっている。
確か、どの建物よりも大きい家のはずだ。
サンズからもらったマフラーは完全に地面を引きずってしまっている。
そんなことお構いなしに走る。


あれだ!!


大きな建物、明かりがついている。


バァァァン!!


急いでドアを開けて駆け込む。
サンズからからかわれた時と同じくらい大きな音を出して入る。
唯一違うのはきちんと扉を閉めたことだろうか。
パピルスが驚いた顔でフリスクを見つめていた。
急いで駆け込んできたフリスクに察したのか、パピルスが話しかけてきた。


「おかえり、フリスク。温かいものでも飲むか?」


「うん、飲む…」


マントをつけたまま、近くにあった緑色のソファに座る。
体がカタカタと震え、マントで膝も体を包み、マフラーすら体に巻き付けて蹲る。顎がカタカタと音を鳴らす。


「フリスク、サンズはどうしたんだ?」


「用事があるって言ってどこか行ったよ」


「またか…サンズは一体何を考えているのやら……いつもそうなんだ…ふらっといなくなってはふらっと帰ってくる」


「そうなの?」


パピルスが温めたミルクをフリスクに差し出した。
湯気が出ている。受け取ってふーふーと息を吹きかけながらすする。
甘くて美味しい。優しい味がする。


「あぁ、いつもなにをやっているのか、全くわからん。でも!サンズはとっても強いんだぞ!」


強い、か。確かフラウィーはサンズのこと一番危険だって言ってた。
そういう意味で言ったのかな?


「あ!フリスク、お前もいい加減寝るんだぞッ!キャラがお布団を敷いてくれているんだ!パジャマは……キャラのを借りるしかないな!俺様の部屋のクローゼットルームにキャラのがあるはずだからキャラに言って借りるといいぞ」


「うん。なにからなにまでありがとう」


飲み終えたミルクのカップをパピルスに手渡す。
パピルスはにこっと笑顔を向けてくれる。
それがどれだけ居場所を与えてくれているのだろう。


なんとなく目を逸らしてしまう。
理由はきっと、自分でもわかっている。


「おやすみ、パピルス」


「あぁ!良い夢を!」


結局目を合わせないまま二階へ上がり、手前にあるドアを開けるとパジャマ姿のキャラがベッドとは別の場所に布団を敷いて横になっていた。電気はついていないからはっきりとは見えない。
寝息が聞こえる。すでに眠ってしまったようだ。


そしてもう一つ、キャラが眠っているその隣には布団が敷かれている。
僕に、だろう。


キャラがすっかり眠ってしまっている。
起こすのも申し訳なくて、暗い部屋の中、クローゼットルームを開け、パジャマを探す。
一着、パジャマらしきものを見つけ、それを着る。
お守りは肌身離さずにパジャマのポケットにしまう。
それだけで少し安心するからだ。


眠くはないけれど、寝ておこうかな。


キャラの横に敷いてある布団に入り、目を瞑る。


うん。やっぱり眠れないや。






大きな椅子、周りには赤く揺らめく炎を灯した燭台がある。
そこに大きな影とそれよりも小さな影がある。
大きな影が動いた。


「そうか、来たか。だが困ったものだな。どうしたものか。いや、お前に言ってもしかたのないことなのは分かっている。よくやってくれているのは承知だからな」


何やら話をしているようだ。


「……どちらにせよ、きっとここにくるだろう。あと一つだというのに上手くはいかないようだ。仕方ない。我々の解放はもうすぐだ。焦る必要はないはずだ。……そろそろお前も帰った方がいい。心配する者がいるだろう」


小さな影は部屋を後にするように大きな影から離れていった。







気づいたときにはうっすらと外が明るかった。
眠っていた体を起こす。眠れないと思っていたが思いのほかぐっすりだったようだ。


パピルスとキャラがいない。隣にあったはずの布団もベッドにも誰もいない。
もう起きているのだろうか。


立ち上がり、布団をたたむ。この布団はどうしたらいいのだろう。
キャラに聞けば分かるかな。


昨日着ていたストライプシャツとタイツ、短パンを履く。
着るものがこれしかないから仕方ない。
お守りも忘れていないか確認する。うん、ちゃんとある。
服をキャラに借りるとしても彼女は女の子なので男のフリスクには似合わない。


布団を積み重ねて、部屋を出て、階段を降りる。
そこにはキャラがいた。


「あ!フリスク、おはよう」


「キャラ、おはよう」


にこやかに挨拶している様子、フリスクも心を開いて会話することができそうだ。
昨日の印象とだいぶ変わっている。


周りを見るもパピルスをサンズがいない。
聞いてみることにした。


「二人はどこにいったの?」


「あぁー……朝の稽古をしてると思うよ。毎朝やってるんだ。外にいるよ。朝はすごく気温がちょうどいいから朝の稽古には最適なんだ」


「稽古?」


「そう。パピルスがロイヤルガードだからサンズが鍛えてくれてるの。見てみる?」


なんの稽古だろう。気になる。
質問には当然イエスだった。


「うん、見てみたい」


茶色のマントを付け、ゴーグルをマントの上からつける。


キャラもマントを着る。緑色のマントだ。その上から首元に縁の黄色いゴーグルをつける。
僕のとは形が若干違う。なんて説明したらいいかわからないけど。同じ色のゴーグルだ。


フリスクが見ていることに気づいたのか、キャラが説明する。


「これね、パピルスが作ってくれたの。すごいよね!しかも昨日できたばっかりなんだ!フリスクのも作ってくれると思うよ!」


とても嬉しそうに話している。周りにお花でも飛んでいそうなほど屈託のない笑顔だ。


「それは楽しみだね!早く稽古見たいから行こう!」


長々と話しそうなキャラの話を遮って扉を開ける。
昨日の昼の猛烈な暑さと夜の凍えるような寒さとは違いさわやかな風が体全体を包む。
扉の先にはパピルスとサンズがいた。


サンズが身をかがめ、特攻しパピルスに向かってジャンプしたと思えば顎に向かって右足を蹴り上げた。


それを読んでパピルスは手に持った骨の武器でガードする。
サンズの攻撃はとても重いようで顔に焦りがあるように見える。
ガードされた右足はそのままにジャンプした反動で、まだサンズの体は上に上がっている。
次は上半身を左に回した後、左足でガードのできていない隙を回し蹴りでパピルスの右頬に向かって蹴り飛ばす。


蹴り飛ばした音が響く。


ズザザーとパピルスが砂の上で転がった。
その様子を見てか、サンズはケタケタと笑っていた。


「ダメだなーパピルス。顔に焦りが見えすぎてる。そんなんじゃ、相手の気持ちに余裕を持たせることになるだろ?次の手次の手を考えながらじゃないと攻撃に迷いが生まれちまう。その結果がこうだ」


両手を広げて今の攻撃について説明する。


「ぐぬぬ…悔しいが全くその通りだ…本当にサンズは強いな!」


「heh 今の蹴りが本気だったら今頃塵になってたな」


「それは笑えないぞサンズ!!」


仰向けになりながらぷんぷんと怒っているパピルスと弟をからかっているサンズ。
二人は家の前に立っている二人の人間に気づいたようだ。


「あっ!おはようフリスク!恥ずかしいところ見られちゃった」


頭のバンダナ、スカーフ、黒いインナーについてしまった白い砂を手で払う。


「稽古って戦いの…?」


「そう!サンズって強いでしょ?私も教えて欲しいんだけど女の子はダメだ!っていうの!パピルスだけずるいよね!」


彼女は頬を膨らませて少し不機嫌そうな顔をするのに対して困り顔で骨兄弟は答えた。


「ニェー…そんなこと言われてもな……」


「heh 悪いな。さすがに女の子の顔を殴れるほど俺は落ちてない。それにパピルスはロイヤルガードだからな。鍛えとかないとアンダインに俺がシバかれちまう」


アンダイン?そういえば昨日も聞いたな。
聞いてみよう。


「昨日も言ってたけどアンダインって?」


その質問をすると骨兄弟は顔はフリスクに向けたまま目を互いに合わせて、すぐ逸らしパピルスから話し始めた。


「彼女は有名なロイヤルガードの隊長なのだッ!とっても強い!ロイヤルガードの歴史上最年少で隊長に上り詰めた努力の天才だッ!あとは、人間ハンターだってことかな…キャラは特別らしいんだけど…」


人間ハンター?
どういう意味だろう?


「えっと…実をいうと今すぐにでもアンダインに人間がこの砂漠にきたことを報告してアンダインの所に連れて行かないといけないんだ」


「まぁ、とりあえずは怪我もしていたから怒られはしないだろ。そんなことより、ほら。そろそろ来るぞ」



「あ!そっかもうこんな時間だもんね」


三人は空を仰ぎ見る。
空は白い雲に覆われている。少ししてからだろうか、ぽつぽつと水が降り注いだ。


これは……雨?
砂漠に、雨?


「お、きたな。砂漠に雨なんて珍しいだろ?この雨は俺たち民のために王が降らせてくれているんだ。本当は女王もできるんだが、今は行方がわからなくなってな。それに昼間じゃ太陽の日差しか強すぎてだめだし、夜は冷えすぎるからこの時間帯にしか見られないぞ」


女王?雨を降らせる……?まさかね…。


「雨はいいぞ!俺様は雨が大好きだ!あと、雨があがった後は虹が出るらしいなッ!…見たことは一度もないけどね。いつかこの砂漠をでたらとても大きな虹をこの目に焼き付けるのが俺様の夢だ!」


ぽつぽつと少量の雨が降り注ぐ。
声を高らかに、にぇーへっへと笑うパピルスの横でサンズは少し浮かない顔をしていた。


「おかしい。いつもより雨の降る量が少ない。王になにかあったか?いや、そんなはずはないとは思うが…」


ぼそぼそとなにかを呟いている。


「サンズ?どうしたの?」


キャラがサンズに声をかける。
キャラにも浮かない顔をしている彼に気づいたようだ。
心配する少女に心配をかけさせないようにか、にやりと口角を上げて右目を閉じ、ウインクをしながら頭を撫でる。


「あぁ、なんでもない。キャラ。お前のほうこそ右腕は痛んでたりしないか?」


「うん、朝痛くて起きちゃったけど、今は痛くないよ」


「そうか……後でアルフィスのところに行って痛み止めを貰っておく」


「うん、いつもありがとう、サンズ」


??
なんの話をしているのだろう。


その考えを聞く前にサンズが先に声をかける。


「さ、そろそろ帰るか。動いたら腹が減った」


あっ!


咄嗟にサンズのマフラーを掴む。
歩き始めていたこともあり、反動で若干首が締まってしまったようでウ”ッと声が漏れた。
びっくりしたのかすぐに後ろを振り返り、マフラーを掴んでいたであろう人間の子供に声をかける。


「なんのつもりだ…一瞬苦しかったぞ」


怒っているわけではない、むしろ諭すような口調でフリスクを叱る。
でもどうしてもお願いしたいことがあった。


「サンズ!僕にも稽古教えて!」


濁りのなく訴えてくる子供を直視することができずに目を逸らす。


「あー……今はそんな気分じゃないんだ。悪いなフリスク」


「ずるい!パピルスには教えてたじゃん!僕もサンズみたいに強くなりたい!」


フリスクはマントを掴んでサンズを揺するが、彼は目を合わせてくれない。むしろ困っているようだ。


サンズがフリスクの掴んでいたマントを離させるように勢いよく掴んで引っ張る。
フリスクの手からマントが離れるのを目で確認した後、フリスクに背を向けて全速力で
Grillby'sのある方向へ走って逃げて行った。


「あっ……!ちょっと…!サンズ!!」


フリスクも自分の持てる全速力で走るも大人(?)であるサンズに、しかも足場の悪い砂漠で運動神経がいい骨に勝てるわけがなかった。
膝と手をついて、はぁはぁと息切れしゲホゲホと咳がでた。
パピルスが後ろから付いてきていた。彼は息切れをしていない。スタミナはあるようだ。
雨はとうにあがってしまった。


「フリスク、そんなに強くなりたいのか?」


「ぜぇ…ぜぇ……う……うん…だって…げほげほ……僕だって男だもん」


「うーん…どうしてサンズは教えてくれないんだろうね?フリスクが子供だから?」


パピルスが背中をさすってくれている中、息切れしていた。
かっこよくいえずに情けない気持ちになる。


パピルスはなにかを考えたあと、思いついたように、グーにした右手を左の手のひらにポンッとのせる。


「フリスク、準備ができたら走ってきた場所と逆の方向に進んでくれ。理由はあとで分かる」


そう言うとパピルスは自分の家の方向へ走っていった。


はぁはぁとまだ息切れしている。
ザッザッと砂を踏む音が聞こえる。


「フリスク!お水は持って行かないと、これからとても暑くなるから危ないよ!」


キャラの声だ。
未だ、手をついて息切れするフリスクの側にしゃがみ、水の入った水筒を渡す。
フリスクは水筒の蓋を開けて水を飲む。
今日はまだ何も口にしていなかったこともあり、とてもおいしく感じる。


「なんだか、パピルスがあっちに走っていったけどなにかあったの…?まぁ、いっか。サンズは…たぶん、サンズはフリスクのこと心配なんだよ。だからやらせたくなかったんじゃないかな?」


水を飲んだからか、呼吸も落ち着いてきた。
キャラの言い分も分かる。


「でも、僕だって強くなりたいよ。誰かを守れるくらいに……」


砂漠に来たばかりのころはこんなこと一回も考えなかっただろう。
そう考えるに至るには色々なことがありすぎた。
後悔も、きっとあっただろう。
だからこそ強くならないとと二人の稽古を見て思ったのだ。
キャラはなんのことかわかってはいないものの、頷いた。


「私もね、守りたい人…いや、モンスターがいるんだ。弟なんだけどね。誰よりも甘えん坊で誰にでも優しくて、自分よりも他のモンスターを助けるようなお人よしだったんだ。ある日ね、理由はわからないんだけどパパとママが喧嘩することが多くなっちゃって、それで…聞いちゃったんだ。金色のお花を見つけて、手に入れることができればどんな願いも叶うんだって」


金色の…花…?
フラウィー…?


金色の花と聞いて真っ先に思いついたのはフリスクに対して嫌味のように卑下する花。
あの花のことを言っているのだろうか。
だとしたら……。
キャラが話を続ける。


「だから弟はパパとママが仲直りできますようにってお願いするんだって言ってそのお花を探しに家を出て行っちゃったの…。でも何日経っても戻ってこなくて……だから、私も家を飛び出してきちゃったんだ…」


「その金色の花、知ってるよ」


咄嗟に言葉が出た。
声を出したことよりも先にフリスクの発言に目を見開いてとても驚いていた。


「知ってるの!?見たの!?どこに!?」


切羽詰まったような顔をするキャラ。その表情に多少なりとも引いているフリスクは、指を指した。


「あそこ、Grillby'sの前に”いた”んだ」


Grillby'sはすぐ目の前にあった。
キャラはすぐに立ち上がり、フリスクに言葉を残した。


「ありがとう!その水筒、使って!私、周りを探してみるから、先帰ってて!」


素早く身を翻し、走っていった。


サンズには逃げられ、パピルスは向こうで準備すると言っていなくなり、キャラは金色の花の話をするといなくなりで、フリスクは取り残されてしまった。


…………これからどうしようか…。
そうだ、パピルスが言ってたな。走ってきた方とは逆にこいって。
Uターンすればいいのかな。


幸い、水を飲んだおかげで気力は回復した。
急がなくても大丈夫だろう。
雨の降っていた雲はすっかりなくなり、日差しが強くなってくる。
まだ暑いというほどではないが、これから辛い暑さになると考えると憂鬱になる。


砂の上を進む。今考えると白い砂というのは確かに雪にも似ている。フリスクは本でしか見たことはないから確証があるわけではない。
昨日の夜や、さっき走っていたときには見えなかったが、ようこそ!スノーフルへ!と書かれた看板がある。
スノーは雪という意味だが、この白い砂を雪に見立ててスノーフルと呼んだのが名前の由来だろうか。


パピルスは名前にはちゃんと意味がある、と言っていた。このことだろうか?
僕の名前にも意味はあるのだろうか?
いや、考えるのはやめよう。
今はパピルスのところへ行こう。


家の前に来る。いまドアを開けたところで誰もいないだろう。


そういえば、まだ何も食べてない。お腹空いたな。こういう時はママがバタースコッチシナモンパイを作って……。
バタースコッチシナモンパイ!!
あれはどこにいったんだ!?


迷いなくドアを開けて、自分の寝ていたパピルスの部屋に行って周囲を見る。
テーブルの上にはラップのされたバタースコッチシナモンパイがあった。


あった!よかった。
鞄がないからポケットにでもしまおう。
今はまだ楽しみに取っておこう。
もう少しもらっていけばよかったかなと少し後悔した。
そう思うほど、このパイはおいしいのだ。



安心して家をでて、サンズを追いかけて行った方向とは逆方向に歩く。


強風が起き、砂が舞う。進んでいく度に砂が舞っているようだ。
怪我はだいぶ良くなったし、キャラからもらったマントがある。
だが、目が痛くなってくるため、ゴーグルを目につけた。


うん、よく周りが見える。
………?あれは……?


大きな影が見える。それにしては細い体だ。
あれは…パピルスだ。


なにをやっているのだろう?


近づいていくフリスクに気づきパピルスが話し始めた。


「よく来たな!フリスク!」


仁王立ちをしているパピルス。
その顔はなにやら誇らしげだ。


「キャラの友達にこんなことをするのは俺様にとってもつらい物があるが…フリスク!俺様がサンズに変わって稽古をつけてやろう!」


パピルスが急にそんなことを言うものだからフリスクはとても驚いていた。
といっても顔には出てないのだが。


「キャラと友達になったことでお前はひとりぼっちではなくなった…だが、俺様と友達になろうなんて考えないほうがいいぞッ!そんなことは許されないのだ……だって、人間を見つけたらすぐに知らせろってアンダインに言われてるし、仮にも俺様はロイヤルガードの一員なのだ…。だから……」


パピルスが顔を下に向けた。
そもそも、友達になろうなんてキャラにもパピルスにも言っていないし、そんな話を二人にした覚えがない。
妄言だろうか?
パピルスが顔を上げて、両手で自分の頬を叩いた。


「しっかりしろ!パピルス!俺様はロイヤルガード!もし、フリスクに稽古をつけて強くなれば、きっとこの先も大丈夫なはずだッ!キャラの友達をアンダインに渡さずに済むのだッ!そうすれば、もうキャラはあんな悲しい顔をしなくて済むのだッ!」


「ねぇ、パピルス。……つまりは、僕に稽古をつけてくれるの?」


フリスクの発した声に気づいて、パピルスは話続ける。


「あぁ!そうだ!ここは砂がよく飛んでいるから見つかりにくい!俺様のお気に入りの場所だ!……本当はベッドのほうが好きだけど…」


「さぁ!人間!戦う準備はできたか!?」


パピルスがどこからか、自分の身の丈と同じくらい長い骨の武器を取り出して戦闘態勢に入る。


稽古…ありがたかった。


フラウィーの言葉を思い出す。


”もし、もしだよ?誰かを殺してもリセットできてしまうことも、逆につまらないからリセットして殺しちゃうこともキミは出来るんだ。そんな力、たくさん使わないと…ねぇ?どうせ最初からに戻るんだから”



ポケットに入っているお守りを握る。



自分の中の誰かが微笑んだ。





snowdin     名前の由来       end


次回、パピルス戦!
今回も分岐ありです。
さて、心を癒し、救う道を選ぶか、自らの心を殺し修羅の道を選ぶか、はたまた二つともか、閲覧者様の選択になります。
サンズがフリスクに稽古をつけない理由、それはフリスクが持っているあれも原因の一つだと思います。

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